住みよい堺市をつくる会事務局長 堺市職員労働組合執行委員長
丹野 優
大阪市・堺市を分割し特別自治区に再編する「大阪都構想」を掲げる「大阪維新の会」が11年4月の統一地方選挙で躍進、堺市議会でも第1党となりました。
同年11月の府・市ダブル選挙で、松井氏・橋下氏が当選しましたが、翌年2月、竹山市長は大都市制度推進協議会への参加見送りを表明、また3月堺市議会でも維新の会提案の同協議会参加条例を否決しました。さらに10月、竹山市長はマスコミインタビューであらためて「堺市分割に反対。市民に身近な市政は政令市でも可能」と表明しました。
昨年12月の総選挙で、「日本維新の会」が54議席を獲得、とりわけ大阪府内の小選挙区では19選挙区中12議席を占め、堺市においても、15区(美原区、富田林市、河内長野市、松原市、大阪狭山市)は維新新人が、16区(堺区、北区、東区)は維新の協力を得た公明党元職が、17区(西区、中区、南区)も維新新人がそれぞれ議席を得ました。
また、比例代表選挙の得票数(堺市全区)は、維新が14万票超を獲得し、公明党と合わせると20万票を超えるという結果でした。(下表)
政党名 |
維新 |
自民 |
公明 |
民主 |
共産 |
みんな |
未来 |
社民 |
幸福 |
得票数 |
142,025 |
75,168 |
60,594 |
34,194 |
30,191 |
20,854 |
15,516 |
4,373 |
1,139 |
今年1月6日、竹山市長は新聞各社の取材に対して、「2月議会で今秋の市長選挙に再選をめざして出馬表明する意向」を示しました。
これに対し、維新の会・松井幹事長は「大阪全体の再生にとってマイナス。大阪が一つにまとまるような人を選んでいきたい」と述べ、候補者の選考作業を加速させる意向、と報道されています。
堺市には、市民が主人公の市政をめざし活動する「住みよい堺市をつくる会」(各分野の運動団体で構成)があります。つくる会では、11年1月に、立命館大学の森裕之教授を講師に、学習会「大阪都構想の検証」を行い、その後「堺市の未来と大阪都構想」をテーマにした取組みを相談してきました。
一方、福祉関係団体の方々や堺市職労のメンバーなど有志で「大阪都構想に関する取組みは、地域のコミュニティや財源問題など地方自治の本質に関わることなので、堺市解体に否定的な意見を持つ幅広い市民が主体となる運動に」と議論を重ねました。
そして、そのために「自由と自治・堺の会(大阪都構想から堺市を守る自由と自治・堺の会)」結成を提起し、様々な立場の方々と継続した取組みをすすめることにしました。
これまでに、元自民党市議会議員、元市特別職(前副市長、元代表監査)、元自治連合協議会会長や校区連合自治会長(2名)、堺市在住のエコノミスト、社会福祉法人理事長、堺市出身の講談師(堺市観光大使、元参議院議員)、堺市在住の歴史研究家など様々な立場で堺市の発展に尽力されてきた方々、大阪市立大学名誉教授の宮本憲一氏や立命館大学教授の森裕之氏、大阪市労組の中山副委員長、野宿者ネットワークの生田武志氏や反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠氏などにご協力いただき、一昨年9月から4回のシンポジウムやフォーラムを開催、述べ1,000人超の市民が参加しました。
さらに「地域できめ細かく取り組もう」と、7区全てでフォーラムやつどいを開催することにしています。また、「堺はひとつでええじゃないか!」街頭シール投票宣伝では、「大阪都構想で堺市がなくなることについて」「堺市の財源が吸い上げられることについて」圧倒的多数が反対という結果でした。
そして昨年6月、「堺市の分割・解体に反対」の一点で大きな共同と世論を広げようと「堺はひとつ・市民アピール」を提起し、賛同人は1,000名を超えて広がっています。今後、1万人を目標に運動を継続しようと、話し合っています。
思想信条をこえて対話と共同をすすめる中で、多くの人々が私たち以上に地域のことを大事に考えて活動しておられ、それが故に、維新の会が強引にすすめる大阪都構想によって、政令市・堺と地域のコミュニティがズタズタにされることに大きな危惧と怒りをもっておられることを「体感」しました。
また、私たちのペースやイメージを優先するのではなく、地域の方々の複雑な思いやこだわりを踏まえて取り組む必要があり、「立場の違いを超えた共同」には、文字通り「ねばり強さ」と「柔軟さ」が要求される、と強く感じました。
その中での私たちの役割は、「競争」を煽り、市民相互を「分断・対立」させる維新の会などの主張に対し、堺を愛する多くの人たちとの「絆」を広げるため、これまでの枠を超えて、固定観念にとらわれずに思い切って呼びかけ、「堺の民主主義と自治を守る」共同運動に多くの人に参加してもらえるよう「縁の下」の努力を重ねることだと考えています。
いま、奈良女子大学の中山徹教授に助言をいただきながら、「大阪都構想を批判するだけでなく、これからの堺市をどのように発展させていくのか、私たちのビジョンが必要」と議論し、「堺市ビジョン研究会」を立ち上げ、都市内分権や産業振興などの主要政策について、提言を出そうと話し合っています。
しかし、大阪都構想で堺市が消滅することや、財源が吸い上げられる、ということは多くの市民にまだまだ伝わっていません。また、くらしや仕事をはじめ厳しい状況を何とかしてほしい、との切実な気持ちから維新の会に期待する人々もたくさんおられることも事実であり、運動のピッチを上げなければ、と考えています。
「竹山市長が2月議会で出馬表明」「維新の会が候補擁立へ」と報じられるもと、今後議論が本格化することは明らかです。
私たちは、3年半の市政運営や政策、実績の評価・検証も行いながら、秋の歴史的なたたかいの大局的かつ主体的な方向について、地域・職場での議論を旺盛にすすめることにしています。