神田敏史+長友薫輝 著
自治体研究社
2017年7月発行
定価(本体1,800円+税)
この本は、国保のしくみの理解と、第2章では、国保って何?ということで、質問と回答形式で、大変読みやすくなっています。保険給付編では、「医療機関で請求される窓口負担が払えない場合はどうしたらよいのですか?」、「窓口負担の減免制度はどのようになっていますか?減免をうけるためにはどうしたらよいですか?」、「保険料を滞納したら、窓口負担が高くなる保険証にかえられ困っています、どうしたらもとの保険証に戻すことができるのですか?」、「保険料を滞納していたら、保険証の更新時に、『短期被保険者証にかわります。交付は市町村窓口で行います。納付相談も行いますので必ず来庁してください』との通知が届きました。納付相談といってもお金がなく行けない。医療機関に受診するために保険証はほしいが、どうしたらよいですか?」と具体的事例に答える本となっています。
ぜひ、ご一読ください。
以下に、この本のはじめにと目次を掲載いたします。
2018年度から、国保の運営に都道府県が加わります。これによって大きな変化が起きることになりました。
国保料(税)を決めるしくみが変わります。都道府県が国保の運営に関わるため、都道府県にも国保運営協議会がおかれることになります。
「国保って、何のこと?」
まったく想像がつかない方もいれば、「何となくわかるけど、全容は…」という方もおられることでしょう。
国保とは「国民健康保険」の略称です。公的な医療保険のひとつです。
私たちは、国保を守り改善していくための第一歩は、まず国保そのものをよく理解することだと考えています。国保の目的、制度のしくみ、運用の実態、今日的課題を知ることから、改善への取り組みがスタートするのではないでしょうか。
本書は、「長友先生、国保って何ですか」で紹介した「国民健康保険のしくみ」、「国保って何?ー質問と回答ー」を引き継ぎつつ、2018年度から始まる新しいしくみを紹介するものです。
特に第3章では、新しいしくみのポイントは何か、都道府県と市町村はそれぞれどういう役割をもつのか、保険料はどのように決められていくのか、保険料を試算してみるとどうなるのか、などを解説します。
国保を知ることで、国・都道府県・市町村の役割やあり方を考えることになります。また、国保を通じて、地域の医療保障のあり方にも関心を広げることができるように思います。
みなさんにとって、本書がそのようなきっかけとなれば幸いです。
2017年6月 執筆者を代表して 長友薫輝
1国保の基本
(1)国保とは/(2)皆保険体制を下支えする国保/(3)国保に加入している人々/(4)国保には社会の変化が反映する/(5)国保加人者の所得水準と国保料/(6)加入者はどれぐらいの国保料を負担しているのか/
2国保が貧困を拡大する
(1)高い国保料となる理由?ー加入者に高齢者が多いー/高い国保料となる理由?ー「支払えるかどうか」の視点が国・自治体から欠落しているー/(3)高い国保料となる理由?−主な原因は国庫負担の削減ー
3社会保障としての国保
(1)国保は社会保障/(2)一体改革と自民党「改憲案」に見る社会保障の考え方/(3)「改革イコール国庫負担の抑制」という発想を転換する/(4)社会保険の2つの原理ー社会原理と保険原理ー/(5)国保は「助け合い」の制度ではない
4国保の歴史からわかること
(1)「国保は助け合い」という時代あった/(2)国保は社会保障の一環/(3)保険原理の強調/(4)社会保障としての国保へ/(5)自己責任論の強調
5自治体が国保を運営している
(1)地域住民が国保に関心を持つ/(2)国保料の算出方法/(3)自治体ごとに国保料の算出方法が異なる/(4)保険料の違いはなぜ生じるのか/(5)保険料の減免/(6)自治体独白の減免制度/(7)医療費白己負担の減免
6国保への政策的対応
(1)国保世帯に対する現行の政策的対応/(2)国保への財政負担の意義、役割
7国保の都道府県単位化
(1)医療保険制度改革関連法の成立/(2)2018年度から国保の都道府県単位化/(3)都道府県の役割強化/(4)医療・介護の提供体制の再編/(5)地域で医療保障をつくる視点
市町村における国民健康保険の仕事の流れ(例)
1運営主体編 −国保って国が運営しているのー
「保険者」ってなんですか?/「保険者」って何をするのですか?/「保険者」って、誰がやっても同じなのですか?/都道府県が国保の「財政運営の主体」となるといわれます。これはどういうことですか?/都道府県が「財政運営の主体」となることで、いまの国保制度はどう変わるのですか?/市町村の窓口はいつも混んでいて、職員もじっくり話を聞いてくれません。国保窓ロできちんと話を聞いてもらえるようにするには、どうしたらいいのですか?
2財政編 −国保って、保険料で運営されているの?
加入者の助け合いを基本とする国保制度は、加入者の保険料で運営するのが原則ではないです?/法令に定めのない一般会計から国民健康保険特別会計への繰入(「法定外繰入」といいます)は、やめたほうがいいのではないですか?/「法定外繰入」が必要なのはわかりました。ところで、規模はどの程度が望ましいのですか?/「高い保険料負担」を下げるために、市町村の「法定外繰入だけでなく、国や部道府県の負担は増やせないのですか?/今回の国保制度改革で「高い保険料」は下がるのでしょうか?/国保制度改革では「高い窓口負担」は下がるのでしょうか?
3資格編 −国保は自営業者の保険?
会社を辞めましたが、国保には加入しませんでした。2年後、激しい腹痛になり、救急車で病院に運ばれました。「保険証がないと医療費が数百万円かかる」と言われ、びっくりしました。市町村に問い合わせたら「国保の加人には80万円かかる」と言われました。どうしたらいいでしょうか?/就職したら勤務先から「うちの保険は市町村国保」と言われたけど、国保に入らなければいけないのですか?/国籍のない外国人でも国保に入れるのですか?
4保険料編 −保険料はどうやって決めている?
国保の保険料はどのように決めているの?/保険料の減免を受けるにはどうしたらよいのですか?/リストラにあった場合に保険料負担が軽減される制度があると聞きました。どのような手続きをとったらいいのですか?/市町村の考えで保険料を下げることはできないのですか?/財政運営責任が都道府県になることを受けて都道府県が保険料率を決めるといわれますが、本当にそうなるのですか?/今秋の制度改革では、なぜ都道府県単位で保険料率が統一されないのですか?/一部の都道府県では、今回の制度改革で統一保険料率とする動きがあるようですが、これはどうしてですか?
5保険給付編 ー国保に入っても、窓口負担が払えないとだめなの?−
医療機関で請求される窓口負担が払えない場合はどうしたらよいのですか?/窓口負担の減免制度はどのようになっていますか?減免をうけるためにはどうしたらよいですか?/保険料を滞納したら、窓口負担が高くなる保険証にかえられ困っています、どうしたらもとの保険証に戻すことができるのですか?/保険料を滞納していたら、保険証の更新時に、「短期被保険者証にかわります。交付は市町村窓口で行います。納付相談も行いますので必ず来庁してください」との通知が届きました。納付相談といってもお金がなく行けない。医療機関に受診するために保険証はほしいが、どうしたらよいですか?
1変わる市町村の財政運営
2新たな財政運営の仕組み ーキーワードは「納付金」と標準保険料率
(1)「納付金」/(2)「標準保険料率」
3財政運営主体としての都道府県のしごと
4財政運営以外の市町村のしごと
5国保事業の運営方針について
(1)都道府県が策定する国保運営方針/(2)部道府県の運営々針に盛り込まれる事項のポイント
6 2018年4月実施までの流れ
7地域で取り組む政策的課題
1大きく変わる市町村国保特別会計
(1)歳入の変化/(2)歳出の変化
2新たな財政の仕組み
(1)国保事業費納付金 1)「都道府県の必要額」の算定 2)市町村ごとの納付金の算定方法/(2)標準保険料率について 1)「標準保険料率」設定と市町村の保険料率 2)「国保事業費納付金算定基礎」と「標準保険料率算定基礎」との違い 3)「標準保険料率算定基礎」と「実際の保険料率を算定するための基礎」との違い
3納付金及び標準保険料率の試算と激変緩和措置について
(1)試算における保険料の激変をどうみるか/(2)都道府県単位で決定される調整係数α、βの影響について/(3)国保事業費納付金及び標準保険料率の試算の前提条件について/(4)試算結果をどのように受け止めるか/(5)激変緩和措置について
4どうなる一般会計からの法定外繰入れ
5市町村に設置された財政調整基金はどうすべきか
6どうする国保運営方針
7 2018年4月の国保制度改革までの動きについて
(1)都道府県における国保運営協議会の設置/(2)都道府県国保運営方針の作成/(3)市町村の国保運営協議会や議会への国保運営方針の報告と議論/(4)都道府県国民健康保険条例の制定/(5)国保事業費納付金及び標準保険料率の算定/(6)都道府県国民健康保険特別会計の設置/(7)制度改革に対応したシステムの構築