大阪自治体問題研究所「地域情報研究会」(担当責任者 黒田充)が、2007年夏に行った徳島県上勝町光ファイバ事業に関する住民の利用実態調査の報告書です。
編著 黒田 充(大阪経済大学非常勤講師、大阪自治体問題研究所研究員、自治体情報政策研究所代表)
発行 自治体情報政策研究所
2007年11月1日発行、A4判・78ページ、頒価800円
報告書の入手、お問い合わせは、大阪自治体問題研究所まで
テレビ放送のデジタル化が国策として進められています。2011年7月24日までには、アナログ放送は全国的に停波される予定です。デジタルテレビへの買い換えや、放送・中継設備の改修が停波に間に合うのかといった問題に加え、全国津々浦々の難視聴地域の共聴受信設備をどうするのかの問題も浮上して来ています。
同時に、政府・総務省は「2010年度までに光ファイバ等の整備を推進し、ブロードバンド・ゼロ地域を解消する」ことを国家目標として掲げています。彼らはブロードバンド化は民間主導が原則であるとしながらも、投資効果が得られない農村や山間の過疎地などについては、自治体による光ファイバの整備と民間開放が必要だとして、光ファイバ網の整備を促しています。
「葉っぱビジネス」で全国的に名を馳せている徳島県上勝町は、多くの難視聴地域を抱えるとともに、ブロードバンド・ゼロ市町村の1つでした。上勝町は、2006年10月、隣接する勝浦町と共同で、光ファイバを自ら敷設し、これを民間事業者に貸し出すことでケーブルテレビ、ブロードバンド、IP電話などの住民サービスを始めました。これは、デジタル放送とブロードバンドという2つの課題を一挙に解決しようという試みです。
しかし、こうした取り組みを進めているのは上勝町だけではありません。政府・総務省は、2つの課題の解決に有効であるとして、補助金や交付金、地方債などを使って全国の農村や山間の過疎地域に光ファイバの敷設を促しているのです。特に市町村合併を行った自治体では、合併特例債がその財源として活用されています。確かに、光ファイバは2つの課題の解決に有効かも知れません。が、果たしてこうしたサービスは、充分に利用されているのでしょうか。また、住民の暮らしや願いに対応したものとなっているのでしょうか。
「地域情報化研究会」(社団法人大阪自治体問題研究所、自治体情報政策研究所)では、サービスが開始されて概ね10ヶ月が経過した上勝町を対象に、大阪自治体問題研究所の研究員であり自治体情報政策研究所の代表でもある黒田充を責任者として、地元の「上勝町テレビを見る会」と徳島自治体問題研究所の協力を得て利用実態調査を実施することにしました。住民の利用実態を具体的に明らかにすることで、事業のもつ問題点を明確にし必要な改善策を探ることが目的です。
調査は、全世帯を対象とした「記入式のアンケート調査」と任意に選んだ世帯を対象とする「聞き取り調査」により実施しました。アンケート調査については203件の回答をいただき、聞き取り調査については23世帯に応じていただきました。
本報告書は、上勝町住民のご協力のもと、いただいた回答と様々な意見をまとめることで、事業の問題点を明らかにし、改善へ向けた提言を行うものです。本報告書が、上勝町の光ファイバ事業の改善や住民の暮らしの向上だけでなく、全国で展開されている光ファイバ事業を住民の視点から捉え直す資料として、多少なりとも役立てば幸甚です。
最後に、本調査を実施するにあたって、ご協力をいただいた上勝町の住民の皆さまをはじめ、関係者の皆さまにあらためて謝辞を申し上げます。
I 上勝町光ファイバ事業について
II 利用実態調査の概要
III アンケート集計結果
IV 聞き取り調査結果
V 改善へ向けた提言
資料 アンケート用紙および集計結果