泉佐野市職員労働組合・副執行委員長 昼馬 正積
関西国際空港を唯一の拠り所に、これでもかと豪華なハコ物行政を繰り広げ、その借金返済で倒産寸前の泉佐野市。オール与党体制で6期24年続いた向江市長は、誰しもの予想を裏切り2000年2月の市長選挙で自民党市会議員であった現新田谷市長に僅差で破れるという劇的な結果となりました。しかし、誰が市長になっても財政危機は待ってはくれません。昨年の5月には前市長が準備をしていた「行財政改革推進計画及び実施計画」を発表し、前代未聞の36ヵ月延伸200人の職員削減を打ち出し、今年1月から「緊急避難措置」としての12ヵ月延伸が実施されています。
さらに市は、公認会計士の増税案を含む提言と、公募の市民5名が入った行財政改革推進委員会の提言を受け、9月5日に行革計画第二次実施計画(素案)を発表しました。その中身は増税案こそ取り下げたものの、24ヵ月延伸、200人の削減、住宅手当のカットをはじめ、保育料等の使用料・手数料の大幅値上げ、民間委託・民営化等昨年の5月の行革計画を下敷きに一層市民・職員負担を強いる中身となっています。
一方、市長と市議会の関係は、市長選以降の「確執」がいまだ尾を引き、反市長派が市議会の過半数以上を占め、再建論議以前の足の引っ張りあいをしていると言わざるを得ない状態が続いています。
このように脆弱な政治基盤の新田谷市政のもと、単に労使間の交渉だけで、再建の展望を見いだせない中、市職労は、市民に財政危機の原因・責任をはじめ、正しい情報を知らせ市民とともに再建の展望を見いだしていくしか道は無いとの意思統一のもと、市民新聞「ふきのとう」を作成し市民宣伝を行いました。
「ふきのとう」には、市政に対する市民の思いや考えを記入してもらうアンケートハガキを添付し、同時に5月20日に市職労主催で開催する「勝手に『倒産』させない市民学習討論集会」で一緒に考えましょうと市民に訴えました。
その結果、162通のハガキが市職労に返送され、その中身は前市長・市議会議員・全職員の責任をはじめ、ハコ物行政・同和行政・市民病院の運営が原因という声や、長期化する不況のもとで、職員数や人件費を減らせという厳しい声も多くふくまれました。とりわけ印象に残ったのは、もっと市の状況を正しく知らせてほしいというものでした。
そして5月20日の学習討論集会でも「これまでの行財政運営の不透明さ」「帳尻合わせの再建は許さない」「このような集会は、単に一労働組合だけで行うより、幅広い団体・市民と一緒に開催すべき」といった市民の真剣な声がだされました。私たちもこの集会を開催するにあたって各団体等を訪問する中で、市職労の主催では参加しにくいという声をきいていましたので、集会の最後に今度は市民が主催の市民集会を持っていけばどうかと提起し、一緒に準備をしてもらえる市民を募り10名ほどの市民が参加の意思を示してくれました。
その後2週に1度の割合で、土日を中心に市民集会の準備会を開く中では、162通のバカキを最大限に尊重した取り組みが必要との合意のもと、市議会議員にアンケートを取りそれを市民集会で公開していこうということになりました。さらにその論議の中では、職員の数や人件費への声が多いなか、アンケートにはそのことも触れるべきという声が市民から出されました。
私たちも、職員の人件費問題は市民との関係で避けることはできない課題という認識はありましたが、当時は高石市での市議会による24ヵ月延伸の強行採決があった時期でもあり、一方市民側から「私たちは市職労の弾除けでない」という声も出される中、あらためて市職労の姿勢を準備会の中で示すことが必要となりました。
その中であらためて私たちは人件費問題を聖域にするつもりは無いこと、さらに本来「市民生活を守る」という自治体の仕事の中での職員数や人件費は、単に財政危機だから、数や単価の切り下げということでよいのかということ、すなわち、自治体の仕事そのものはまさに職員の「マンパワー」によって市民サービスが行われており、数や単価の切り下げが市民生活にどう影響を及ぼすのかの十分な市民的な論議と、私たち自身が「本当に市民が望む、市民のための仕事ができているのか」「市民の批判に耐ええるだけの仕事の見直しや、改善・経費の節減ができているのか」を真剣に考えながら、「市民の厳しい声と市で働く職員の労働組合として守る課題の矛盾をどう解決していくのか」が課題であることを準備会の中で率直に出しました。
その論議を通して準備会の中での市民との信頼関係が深まったと思っています。私たち自身が矛盾を抱えつつも、それを率直に出しながら、その答えを運動の中で導き出すことが求められています。
準備会はその論議以降、準備会の代表委員(市民3名)が決まり、代表委員が市会議員へのアンケートの依頼から回収、各団体(市長の後援会等も含む)への訪問も精力的に行っていただきました。おもしろいことに仮に市職労だけが単独で訪問しても、門前払いの市会議員等でも、市民がきたら邪険にできないということもあり、議員アンケートは23名中19名の市議会議員が提出するという結果になりました(市職労は徹底的に黒子に徹するという意思統一をしました)。
9月9日の市民集会には220名が参加し、市職労の動員者や各団体からの参加を除いても100名を越える市民が参加され、市民が手作りの集会としては大成功をおさめました。集会後半には市長も参加し、直接市長ともの申す機会もつくりながら、集会参加者の最大公約数的な意見を「私たちの思い」としてアピール的に市長に手渡すということも行いました。
泉佐野市職労の市民との共同は、まだまだ手さぐりの状況です。しかし、市民から返ってきた162通のハガキ、市民討論集会や市民集会に参加してくれた人たちとの出会いやつながりを大事にしながら、「何がムダで、何が必要かの最終判断は市民だ」という立場で、そのためには市民に正しい情報提供し、自治体に働く職員として、その中の労働組合として、真剣に市民と対話をしていくことが財政危機で大変な時だからこそ一層必要です。
「朝日新聞」の「声」覧に代表委員の水野さんの「市民の味方の労組、見直した」という投稿が掲載されました。これは市民との共同をどう進めていこうか、また進めながら悩んでいる私たちを大変勇気づけるものです。市民の信頼を裏切らず、勝ちえるためにも、何としても再建団体の転落をさせず、市民合意・職員合意の再建を引き続き追求します。