調査レポート リサーチ21
議会公開の実態調査
− 大阪府下44市町村の事例 −
1 調査の背景と目的
住民の意思が議員を通して議会に代表され、議会を通じて自治体の行政をコントロールしていくという議会制民主主義は、地方自治において基本原理の1つである。近年では、地方自治体において情報公開条例(要綱等を含む)が急速に制度化され(現在580自治体が制定)、その動きとともに会議録の公開等の問題はクローズアップされている。
本調査では、大阪府内44市町村における本会議、委員会の公開状況を把握し、住民に開かれた自治への糸口を見出すことを目的とする。大阪府内44市町村の議会事務局への電話アンケートにより把握した。
*註 議会の公開状況に関しては、現行の地方自治法115条[議事公開の原則、秘密会]において、本会議の傍聴・参観及び本会議の議事録の公開が原則として定められている。そこで、この法律の対象となっていない委員会の公開状況について特に注目した。これは、このアンケートの特徴となっている。
2 本会議と委員会
議会を住民に開くといえば、制度上は本会議の公開が定められている。本会議の召集は、自治体の長が、原則として都道府県と市では7日前、町村では3日前までに一般に告示して行う(法101)。開会の定足数は半数以上の議員の出席で、議決はふつう出席議員の過半数でなされる。また、議会には、本会議と並存する組織として委員会が設けられているが、これは議会の内部の組織として本会議の一部として分担する機関であり、審議の予備的・専門的・技術的な審査機関である。委員会は、地方自治法に定められている議会の公開の対象とは解釈されていない。
3 調査結果
(1)夜間・休日の開催状況
ここでは、本会議、委員会の夜間・休日の開催について調査した。 本会議や委員会を休日や夜間に開催しているかについて、八尾市と羽曳野市が本会議のみ休日に開催したことがあると回答した。 八尾市では、検討委員会を経て1998年3月7日(土)、8日(日)に本会議を開催している。7日(土)には79名、8日(日)には49名の市民が傍聴した。しばらく間が空いたが、1999年6月12日(土)、13日(日)に本会議が開催され、それぞれ68名、42名の傍聴者があった。 羽曳野市では、1999年3月3日(土)に本会議を開催している。傍聴者は、68名であった。市民にもっと興味を持ってもらおうという意図で実施し、まだ正式ではないが、今後年1回ぐらいのペースで実施する予定である。 八尾市、羽曳野市以外の市町村では、今までに休日や夜間に本会議や委員会を開催したことがなく、今後も予定はないと回答している。
(2)委員会の傍聴
議会には、条例で定める常任委員会と特別委員会とが置かれている。自治法によると、常任委員会と特別委員会は、「予算その他重要な議案、陳情等について公聴会を開さ、真に利害関係を有する者又は学識経を有する者等から意見を聴くことがでさる」。
委員会の傍聴について、大阪府内で約70%の市町が傍聴できると回答しているが、東大阪市、守口市、和泉市、門真市、柏原市、藤井寺市、阪南市、美原町、忠岡町、太子町、千早赤阪村、田尻町では、傍聴することができないとしている。
大阪市や豊中市では、テレビモニターを用いて市民が傍聴できるようになっており、貝塚市や泉大津市では、委員会が行われている隣室で音声のみによる傍聴ができるようになっている。また、委員会と同室で傍聴できる市民の数は5人から20人である。
委員会を傍聴することができる市町のうち、羽曳野市、交野市では常任委員会を公開、特別委員会を非公開にしている。委員会の公開範囲に制限を設けている。
(3)委員会議事録の収録
議事録には委員会の議事も収録しているかについては、約64%の市町において収録がされているが、東大阪市、枚方市、岸和田市、門真市、羽曳野市、泉佐野市、貝塚市、柏原市、交野市、藤井寺市、泉南市、阪南市、四条畷市、美原町、忠岡町、能勢町、千早赤阪村では収録されていない(委員長報告の形をとるもの、要約版、記録として議会事務局に残すものは、「収録されていない」と見なす)。
(4)本会議・委員会議事録閲覧場所
本会議や委員会の議事録を議会事務局以外で閲覧でさる場所を見てみると、ほとんどの市町で市立図書館、市役所内にある情報センター、あるいはこれに類する場所で閲覧ができるようになっている。
また、大東市ではインターネットによる議事録の公開が行われており、美原町では体育館、幼稚園、児童館、民間施設等でも閲覧ができる。
岸和田市では、議事録に委員会議事録が収録されているにもかかわらず、本会議議事録のみが閲覧でさ、委員会議事録は閲覧でさない。
4 まとめ
大阪府内44市町村の会議の公開状況を見てみると、本会議を休日に実施したのは八尾市と羽曳野市のみで、その他の市町村では今後夜間や休日に開催する予定はないという状況であった。平日昼間に住民が本会議を傍聴することは困難であると考えられることから、休日、夜間に開催する意義は大きいと言える。
また、委員会の傍聴は約70%の市町で行われている。委員会の公開は常任委員会、特別委員会等の公開範囲を制限せずに公開することが求められる。また、委員会が行われる部屋が狭いという理由で傍聴人数を限定するのではなく、大阪市や豊中市のようにテレビモニターを用いて多数の市民が傍聴できるようにする取り組み等を取り入れることも必要である。
府下市町村議会公開一覧
質問1 | 1−2 | 質問2 | 2−2 | 質問3 | 質問4 | |
本会議・委員会の休日・夜間開催 | 開催予定 | 委員会の傍聴 | 委員会公開範囲 | 委員会議事録の公開 | 議事録の公開場所、本会議、委員会 | |
大阪市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館、行政資料センター |
堺市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館、市政情報センター、支所 |
東大阪市 | × | × | × | × | × | 図書館、行政情報サービスセンター |
枚方市 | × | × | ○ | ○ | × | 図書館 |
豊中市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 出張所、図書館 |
高槻市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館、市民情報室 |
吹田市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館、市民会館、 コミュニティーセンター、情報公開室 |
八尾市 | 本○ 委× | × | ○ | ○ | ○ | 図書館 |
寝屋川市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 市役所申し込み |
茨木市 | × | × | ○ | ○ | ○ | × |
岸和田市 | × | × | × | × | ○ | 図書館(本会議のみ) |
守口市 | × | × | × | × | ○ | × |
和泉市 | × | × | × | × | ○ | 図書館、 |
門真市 | × | × | × | × | × | 図書館(本会議のみ) |
松原市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館 |
大東市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 市民情報コーナー、インターネット |
箕面市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館、市民情報コーナー |
富田林市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館 |
羽曳野市 | 本○ 委× | × | ○ | △ | × | × |
河内長野市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 情報センター |
池田市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館、情報コーナー |
泉佐野市 | × | × | ○ | ○ | × | 図書館 |
摂津市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館、情報公開室、市民サービスコーナー |
貝塚市 | × | × | ○ | ○ | × | 図書館(本会議のみ) |
柏原市 | × | × | × | × | × | 図書館(本会議のみ) |
交野市 | × | × | ○ | △ | × | 図書館(本会議のみ) |
泉大津市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 公民館、図書館、情報公開室 |
藤井寺市 | × | × | × | × | × | 図書館 |
高石市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 市役所資料コーナー(本会議のみ) |
泉南市 | × | × | ○ | ○ | × | 図書館 |
大阪狭山市 | × | × | ○ | ○ | ○ | 公民館 |
阪南市 | × | × | × | × | × | 図書館、総務課 |
四条畷市 | × | × | ○ | ○ | × | 図書館 |
熊取町 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館、情報公開室 |
美原町 | × | × | × | × | × | 図書館、体育館、幼椎園、児童館、 民間施設、中央公民館 |
島本町 | × | × | ○ | ○ | ○ | 情報コーナー、図書館 |
豊能町 | × | × | ○ | ○ | ○ | 図書館 |
岬町 | × | × | ○ | ○ | ○ | × |
忠岡町 | × | × | × | × | × | × |
河南町 | × | × | ○ | ○ | ○ | × |
能勢町 | × | × | ○ | ○ | × | × |
太子町 | × | × | × | × | ○ | × |
千早赤阪村 | × | × | × | × | × | 連絡所 |
田尻町 | × | × | × | × | ○ | 公民館 |
注 質問1 本は本会議、委は委員会。
1-2 八尾市・羽曳野市については現状を継続。
「リサーチ21」調ベ
リサーチ21(Twenty-One)
西 英子、宮川 智子、佐藤 民枝(以上、奈良女子大学大学院)
出口美紀子(大阪大学大学院)
監修 森 裕之(大阪教育大学助教授)
本レポートは、「おおさかの住民と自治」通巻248号(1999年8月)、1999/8/15発行 から転載したものです。著作権法に基づき論文等へ引用する際には、出所を明記してください。
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