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わが国では、急速な高齢化とともに、介護の問題が老後の最大の不安要因となっている。介護が必要になっても、残された能力を活かして出来る限り自立し、尊厳を持って生活できるようにすることは国民共通の願いであるが、現実には家族だけで介護を行うことは非常に困難になっている。
本調査は、大阪府内44市町村において、高齢者保健福祉計画におけるサービス状況を含めて、介護保険制度スタートに向けての動向を把握することを目的とする。調査は主として大阪府内44市町村への電話アンケートにより実施した。
本調査では、まず各市町村が策定した高齢者保健福祉計画の目標値と達成度を検討した。今回はいくつかあるメニューの中から「高齢者ホームヘルプサービス」に焦点を当てた。その理由としては、現在の高齢者福祉が在宅福祉を重視していること、および他の施設整備事業では市町村間の格差がそれほどみられないことが挙げられる。
図1によって、平成10年度における高齢者ホームヘルプサービスの派遣回数(延べ派遣回数)の実際と目標値とを比較してみると、太子町、和泉市、八尾市、河南町、羽曳野市、交野市では、高齢者1人当たりの派遣回数目標が3回以上であり、実際もその目標に極めて近くなっており、目標と達成度がともに高いと言える。また、枚方市、河内長野市、島本町、岬町、門真市では、実際の派遣回数が目標を上回っており、積極的な対応を行っていると言える。
次に、表1によって、介護保険導入に際して生じる政策的課題に対する各市町村の対応をみていこう。
表1 各市町村の対応
認定外の人へのホームヘルプサービス | 苦情処理機関の有無 | 介護保険料の減免措置 | |
大阪市 | 検討中 | 検討中 | 検討中 |
堺市 | 検討中 | なし | 検討中 |
東大阪市 | 検討中 | なし | 検討予定 |
枚方市 | 検討中 | なし | なし |
豊中市 | 検討中 | なし | なし |
高槻市 | 検討予定 | なし | 検討中 |
吹田市 | 検討中 | 第3者機関設置の方向で検討中 | なし |
八尾市 | 検討中 | 検討中 | 検討中 |
寝屋川市 | 検討中 | なし | なし |
茨木市 | 検討中 | なし | 検討中 |
岸和田市 | 検討中 | 検討中 | なし |
守口市 | 検討中 | なし | なし |
和泉市 | 考えていない | 検討中 | 検討予定 |
門真市 | 考えていない | なし | 未定 |
松原市 | 検討中 | 検討中 | 検討中 |
大東市 | 検討中 | 検討中 | なし |
箕面市 | 検討中 | 検討中 | 検討中 |
富田林市 | 検討中 | なし | なし |
羽曳野市 | 検討中 | 検討中 | なし |
河内長野市 | 検討中 | なし | 検討予定 |
池田市 | 検討中 | なし | なし |
泉佐野市 | 検討中 | なし | なし |
摂津市 | 検討中 | なし | なし |
貝塚市 | 検討中 | なし | なし |
柏原市 | 考えていない | なし | 検討中 |
交野市 | 検討中 | なし | なし |
泉大津市 | 検討中 | なし | なし |
藤井寺市 | 検討中 | なし | 検討中 |
高石市 | 検討中 | なし | 検討中 |
泉南市 | 検討中 | なし | 検討中 |
大阪狭山市 | 検討中 | なし | 検討予定 |
阪南市 | 検討中 | なし | なし |
四条畷市 | 考えていない | なし | なし |
熊取町 | 検討中 | なし | 検討予定 |
美原町 | 検討予定 | なし | 検討中 |
島本町 | 検討中 | なし | なし |
豊能町 | 検討中 | なし | 検討中 |
岬町 | 検討中 | なし | 未定 |
忠岡町 | 検討中 | 検討中 | 検討中 |
河南町 | 検討中 | なし | なし |
能勢町 | 検討中 | ノーコメント | ノーコメント |
太子町 | 検討中 | 検討中 | 検討予定 |
千早赤阪村 | 未定 | なし | なし |
田尻町 | 検討中 | なし | なし |
まず、現在市町村においてホームヘルプサービスを受けている人が、要介護認定の手続きにおいて「認定外」と判定された場合、その人たちにホームヘルプサービスを独自に行っていく予定があるかについては、多くの自治体が行う方向で「検討中」と回答している。
介護保険制度では、介護保険に関する不服や苦情の申し立ては都道府県に対して行うことになっているが、生活にもっとも身近な市町村での対応が重要である。市町村において、独自に苦情処理機関を設置する予定があるかについては、吹田市で「第三者機関設置の方向で検討中」と回答した以外は、窓口での対応は考えているが、特別の機関を設置することは考えていないと回答した自治体がほとんどである。
市町村において、介護保険料に関する減免措置を行う予定があるかについては、「検討中」と「なし」と回答した自治体がほぼ同数となっている。国の動向や近隣の自治体の動向を注視している自治体が多かったのが特徴である。また、ほとんどの自治体では、減免に伴って保険料を値上げするか、または税金で埋め合わせるかといった政策上の根拠について整理できておらず、活発な論議が必要な状況になつている。
大阪府内44市町村の高齢者保健福祉サービスの状況と、介護保険制度スタートに向けての動向を見てみると、現在、ホームヘルプサービスを積極的に行っている自治体と消極的な自治体との差が見られるが、介護保険制度のスタート後は積極的に行う方向で検討している自治体が多くなっている。
現時点では、国や近隣の自治体の動向を見ている自治体が多く、検討を重ねている段階であった。介護保険制度は、「介護を社会全体で支え、利用者の希望を尊重した総合的なサービスが安心して受けられる仕組みを創ろうとするもの(厚生省)」であるので、市町村レベルでの積極的な検討と実施が求められる。その意味では、介護保険はまさに市町村の政策力量がそのまま反映される試金石といえよう。
リサーチ21(Twenty-One)
西 英子、宮川 智子、佐藤 民枝(以上、奈良女子大学大学院)
出口美紀子(大阪大学大学院)
監修 森 裕之(大阪教育大学助教授)
本レポートは、「おおさかの住民と自治」通巻251号(1999年11月)、1999/11/15発行 から転載したものです。著作権法に基づき論文等へ引用する際には、出所を明記してください。