さていまこうした事情から、個々の自治体では、近々の地方債の元利償還のピーク時を控え、急激な実質収支不足の拡大から「財政再建団体」に転落するという危機意識(=「いまそこにある危機」)をもち、そのための財政再建(=行政改革)を検討するという取り組みが数多く生まれている。こうした情勢の中で、いま国の側の地方財政対策をどのようなものか、平成12年度の地方財政対策の概要に見てみよう。
今年度の国のたてた「地方財政計画」によれば、地方財政の財源不足は地方税収の落ち込みや景気対策のための減税措置により、平成6年度以降急速に拡大しており、12年度には13.4兆円(地方財政計画の15%)と過去最高の財源不足になるとしている(図表2)。またこの内訳は、通常収支の不足は9.9兆円、恒久的な減税の実施に伴う減収額が3.5兆円とされている。従ってこの財源不足を補填するためとられる地方財政対策は、交付税特別会計における借り入れと、さらなる大幅な地方債への依存で行うとされ、相変わらず従来からの方針が継続されている。ただ注目されるのは、地方交付税財源には、国の一般会計からの加算措置(7,500億円)や、たばこ税の一部移譲、法人税率の交付税率の引き上げという措置等がなし崩し的にとられていることである(図表3)。
景気回復優先を口実に財政構造改革の先送りを背景にした、こうした従来型の地方財政対策は、はたしていつまで継続可能であろうか。地方分権一括法で見送られた地方への税源移譲など、抜本的な国・地方の財政関係の改革のないまま行くとすれば、全国的に財政再建団体に転落する地方自治体が続出するという、パニック的な状況ははたして生まれないであろうか。その時、はたして国はどのような地方財政対策を指向し選択するであろうか。また個々の自治体はどのように行動するのであろうか。いまこそそれぞれの自治体は、自らの「いまそこにある危機」への対処という内向けの視野にとどまることなく、全国的な自治体の情勢や動向にも視野を広げて、一刻も早く抜本的な税財政改革の運動への取り組みと、全自治体的な展開を可能にする体制構築の必要に迫られているのではなかろうか。
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