寝屋川市役所・職場研究会「チーム2020」の離陸
寝屋川市職員 竹村 三仁
はじめに
先日、市内にある北校区福祉委員会というボランティアの配食サービスを見学・同行させてもらう機会があった。
この小学校区には12の自治会があり、毎年四月に高齢者の調査を行い、独居老人・障害者・老々世帯で「見守り」が必要な世帯をピックアップし、担当ボランティアを配置している。毎月の定例行事としては、10日のいっせい声かけ訪問、25日の配食サービス、第2・4土曜日の手話講習、第3土曜日の「いきいきサロン」など、週に1回はお互い顔を見、声かけできる体制をとっている。中学生による誕生日フラワープレゼント、幼稚園や小学校への行事招待など子どもたちとの関わりも重視している。
その日の配食メニューは「うどんすき」、20人ぐらいの女性ボランティアが狭い調理室で手際よく動き、オール手作りで野菜などの具とペットボトルに入った出し汁が11時すぎに完成。11時半から配食がスタート、ボランティア一人が2〜3軒を担当する。あいにくの雨だったが、お年寄りは正装して心待ちにしていた様子がうかがえる。同行した私たちを紹介するたびに頭を下げられ、何とも言えぬ複雑な感じで顔がこわばった。
高齢者の日常生活に深く関わり行政の今の体制ではとてもカバーできない切実な課題を無償で献身的にやっておられるボランティアの活動に頭が下がる思いだった。市役所や公務員は何ができるのか、何をしなければならないのか、あらためて突き付けられた1日だった。
変化は起こっている、そろそろやろうやないか
寝屋川市は、「元気都市」をかかげる民間出身の市長が就任して2年目、従来の行政たたきあげ市長とは一味ちがう。自治経営・行革推進を両輪に市政をすすめる市長のもと、矢継ぎ早のアイデア実行にも旧態依然とした組織とシステムゆえに職員は消化不良気味、足元がもたついている。酒を飲んではブツブツ、しかし、時代の流れはドッグイヤー、市民のくらしはみるみるたいへんになっている。国は当てにならん。大阪府は一銭もださん話ばかり。でも、宮城や三重はいろいろ新しい取り組みでがんばってる、鳥取も長野も市町村の首長も斬新な取り組みが始まっている。確実に変化は下から起こっている。我々もなんとかせなあかんのとちがうかというところでいつも「オカンジョウ」となる。
愚痴ばっかりでは話にならん、そろそろやろうやないかと言うことになって2000年の6月、職員の有志数人で「2020年 寝屋川のまちづくりを考える」研究会が発足した。「20年後の寝屋川のまちをいっしょに考えてみませんか」という呼びかけに、現在メンバー20名近くが会員となっている。環境・下水・農業委員会などバラエティーに富んでいる。庁外の協力会員の申し出もきている。略称・ネーミングは「チーム 2020」となった。
高齢化率二八%、まちはどう変わる、その処方箋は
寝屋川市の人口予測では、2020年に高齢化率が28%となりピークをむかえ、現在の2倍をこえる数字となる。逆に年少人口は12%で1965(昭和40)年の水準に逆戻りする。
少子・高齢化の進展による市民の意識やくらし、まちの様相はどう変わっていくのか。高齢者の1人暮らし、老々世帯の増加、人口は減少するが世帯数は増加する。住宅・道路・施設はバリアフリーではなくユニバーサルデザインがあたりまえになる。交通弱者の交通権の確立、通院や買い物はどうなる。郊外大型店舗の未来はあるのか。仕事・社会参加・文化・スポーツはどうあるべきなのか。小・中学校は生徒数だけで単純計算すれば、3分の1の学校施設で間に合う勘定となる。減らすのか、維持しながらもっと複合的に利用するのか知恵と工夫がいる。
「地方分権」による権限委譲の流れは、福祉の向上と住みよいまちづくりへの一層のレベルアップが求められ、住民が自治体を選択する時代に突入しつつある。介護保険の取り組みはそのスタート試験と言える。
加えて、地球規模に拡大した資源・エネルギー問題、情報公開・市民参加・NPO、地域コミュニティーの再構築、など新たな課題も突き付けられている。
このようなもとで、市役所の仕事・役割・体制はどう変えていかなければならないか。深刻な財政問題を含め、典型的な都市課題を多重に抱える寝屋川で、その処方箋をつくるのは容易ではない。現実の担当部署や領域の改善はもとより、もっと広い視野と情報・学習・意見交流によって、縦型から横型へ、線から面へ、総合的に課題をとらえ、複雑に絡み合った問題を解決できる組織とシステムの構築が重要となっている。
第1回テーマは「少子・高齢化」、全3回シリーズ
昨年6月に研究会発足した後、会則・加入案内・役員体制を確立。会員加入の訴えと並行しながら、毎月の定例会で課題・テーマ・運営の論議を行った。そして、12月18日に研究会の発足記念講演として、加茂利男先生を招いての第一回まちづくりシンポジウムが開かれた。「2020年の自治体と職員」と題する講演に、行政の研修と違ってよく分かった、スケールの大きな話で問題点が浮き彫りにされた、研究会の課題が明確になった、などの感想が寄せられ好評だった。
2月からは、いよいよテーマ研究会がスタートする。第1テーマは「寝屋川の少子・高齢化問題」に決まり、全3回シリーズで行われ、第1回目は高齢介護室から「高齢者の現状と将来推計、高齢者福祉をめぐる課題」の報告が行われる。第2回目は市内ボランティア団体の実践報告、現場視察や訪問もはさみながら、第3回目で「20年後の提案・構想」にまとめられればと考えている。
今後のテーマとしては(1)資源・環境・エネルギー、(2)情報公開・市民参加、(3)NPO・地域コミュニティー・公共施設のリファイン、(4)まちづくりと商業、(5)自治体の自立と財政、などを考えている。
21世紀に向かって研究会は飛び立った
20年後の清掃労働者は、きっとゴミ収集などしていない。環境問題のプロフェッサーとして市内を飛び回っている。20年後の保育労働者は、緑に囲まれた超複合施設で多世代交流保育をしている。20年後の市役所本庁は少人数でほとんど職員はいない。商店街や小学校区に設けられた地域センターに配置され住民の身近で業務が処理されるシステムになっている。
近づく少子・高齢化社会は、子どもがのびのび育ち、お年寄りがいきいき暮らせる、そんなまともな社会にしなければならない。20世紀の最後に研究会は離陸し、21世紀に向けて飛び立った。一人ひとりの職員が自分の頭で考え、実行できる、そんな出発点に「チーム 2020」がなればよいと思っている。
※この研究会に協力していただける研究者・大学院生を募集しています。
竹村三仁(たけむらみつひと)プロフィール
1950年生まれ、神戸市東灘区出身。
1971年、寝屋川市役所に就職。
この間、寝屋川市職員労働組合、大阪自治労連など27年間、役員を経験。
現在、寝屋川市役所駅周辺対策課に勤務。
門真市財政データベース 1975−1998 |
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