第3回おおさか自治体学校 ― 21世紀の地方自治を創り出す確信に
昨年を大きく上回った参加者
第3回おおさか自治体学校は、8月28日(土)と29日(日)の両日に開催され、309人が参加した。一昨年144人、昨年188人から数も層も大さく広がった。内訳は、研究者・学生・事務局が26人、自治体職員が189人、議員が20人、その他市民が74人である。議員は8市町14人から13府市町20人に、自治体職員は自治労連組織のあるほぼ全自治体から参加した。議員や市民、自治体職員が、机を並べて学び討論する姿には、この自治体学校が21世紀の地方自治を創り出すインキュベータの役割を果たしうることを確信させられる。
大阪ベイエリアを会場にして
今回の会場は、大阪市が集客都市構想の核と位置づける大阪臨海域のコスモスクエア国際交流センターである。周辺にはワールドトレードセンター(WTC)、アジアトレードセンター(ATC)、国際見本市会場(インテックス大阪)、海底トンネルを隔てて、海遊館や大観覧車などアミューズメントスポットが集中している。
市内中心部から地下鉄で15分、徒歩で15分という近さなのに、「遠いなあ」という感想が多かった。1本の導線でありながらニュートラムやテクノポート線などと煩雑に区分されているせいか、車窓から見る風景が「外国か、遠くに旅行してるみたい」と感じさせるせいか、いずれにしても大阪は河川と港で発展した街なのに、そこに住んでいる人々は、海辺から随分と遠ぎけられていることを実感させられる。
しかし会場は快適であった。ちょうど500名程度までの研修専用施設なので、割高ではあるが傾い勝手がよい。宿泊もシティホテル並みの広さのシングルルームである。企業が数日連泊の幹部研修によく利用しているという。
第1日目の午前は、WTCから大阪港を見渡したのち、船で港めぐりを行った。港を市民に知ってもらうために1万円(1時間)で団体に貸し出している大阪市の双胴船「水都」を利用した。説明は、研究所会会員で港湾局に勤務している伊藤儀和氏にお願いした。
地方自治運動の展望が語られた全体会
午後の全体会は「21世紀への構図、日本国憲法と地方自治をめぐつて」をテーマに、二宮厚美・神戸大学教授と、白藤博行・専修大学教授の2人から基調講演をしていただき、鶴田廣巳・関西大学教授の司会で質疑討論をおこなった。
二宮教授の演題は「グローバリズムの中の日本と地方自治」。グローバリズムでいう国際的な市場論理の貫徹は多国籍企業の支配のための論理であること、無国籍ではなく国民主権国家を基本としていること、アメリカの覇権主義であること、をおさえ、対抗軸として「新型福祉国家」を提起された。そして新型福祉国家を具現化するものとして自治体の役割を挙げ、「21世紀の自治体ビジョンとして求められるのは、一般的な自治体でなく、革新自治体のビジョンである」と結ばれた。
自藤教授の演題は「遠くの人権、近くの人権、日本法改革と21世紀の地方自治」。周辺事態法、地方分権一括法、組織犯罪対策三法など民主主義体制の解体につながる重要法案が次々成立しているのに小渕内閣の支持率は上がり、あるいはトルコの震災で阪神淡路大震災を上回る死傷者がでていながら奪われる生命や人権への私たちの思いやりが希薄な実態を例に挙げ、人権、平和、民主主義への鈍感さを指摘し、「憲法的思考を培ってこなかったのではないか」との問題提起に始まる講演にぐんぐん引き込まれた。最後に自藤教授は、地方自治問題を学習する人々の数は増え、その数だけ21世紀の地方自治を拓くヒントがあると展望を示し、「提案型の地方自治創造運動の展開」を提案された。
じっくりと学習・交流できた分科会
第2日日は6つの分科会・講座をおこなった。過去2回の自治体学校は午前中で終了していたが今回は夕方までたっぷり一日かけたこと、したがって午前中に講師からきっちり講義していただいたうえで、事例報告と討論ができたことに特徴がある。
分科会は、(1)地域経済、(2)まちづくり、(3)廃棄物・環境、(4)社会保障、(5)子育て教育の5つを設定した。そして新しく講座「地方自治の歴史と財政分析」を設けた。講師は当研究所の研究者だけでなく、宮田秀明・摂南大学教授ら外部にもお願いした。運営委員は、それぞれが市民運動、自治体職員、若手研究者(院生ら)の三分野で構成でさるように努力した。事例報告は、地域経済分科会で製造業や小売業、金融横間、労働行政などかつてない広い報告者を組織でき、廃薬物分科会での「堺市南工場でのダイオキシン低減策」、子育て教育分科会での「貝塚市の公民館活動」など、この間の研究所事業で結げついた人たちを、この自治体学校の内容、づくりに活かさせていただいたことも特徴であった。
なお9月6日に開催した第2回理事会で、来年は全国自治体学校が奈良で開催され、また10月には静岡で全国地方自治研究集会が開催されるが、みなさんのご協力で積み重ねてさた「おおさかの自治体学校」を、八月末に、大阪の南部地域で開催することを決定した。
(文責 木村)
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