第4回おおさか自治体学校は、「私たちが描く21世紀の大阪像」をテーマに、8月26、27両日、140人が参加して開かれました。内訳は自治体労働者が105人、研究者が25人、議員や市民らが10人です。
会場は、開発型行政の象徴である、りんくうタウンのタワーゲートビル。初日の午前中は、府阪南臨海整備事務所の早見博さんの案内で、タウンウオッチングもおこないました。
過去3回の学校では、全体会・分科会方式をとってきましたが、今回初めて、基調シンポジウム、3つのセッション(地域経済と自治体政策、くらしと社会保障、環境とまちづくり)、総括討論、という方式を採用しました。それぞれのセッション毎に、コーディネータ、報告者、予定討論者をたて、討論は全員でおこなって深める方法です。企画者の一人として、参加者の評価が心配だったのですが、「分科会方式よりも全体像が見えた」など、好評でした。
しかし「地方自治は実践の場である。地域でどのような実践がなされているのか、もっと掘り起こして、実践からの提起をしてほしい」という課題も提起されています。この学校が、地方自治の民主的発展に向けた理論と実践を持ち寄り深める場として、自治体職員や市民、研究者がともに学びあう共同学習の場として、いっそう定着させ発展させていきたいと思います。
実行委員長の鶴田廣巳さんは、総括討論のしめくくりで「討論を通じて、維持可能な社会(サスティナブル社会)が、まちがいなく21世紀のキーワードであることが明らかになった」とし、都市間競争の是非やあり方が討論されたが、公共性をどう回復するか、実現するかという論議は、市場万能主義が席巻するなかで、引き続き重要な論点になっていることを指摘したうえで、自治体労働者(組合)に提案・対案型の運動を提起しました。
理事長の重森曉さんは、まとめと閉会挨拶のなかで「基調シンポジウムで遠藤宏一さんが報告された『経済主義的内発的発展論』批判が学校全体の基調となった」と指摘したうえで、内発的発展を人間発達の視点でとらえること、人間の潜在能力を発揮し、地域の文化や歴史的ストックを生かすこと、そのためのインフラ整備が必要なことを指摘しました。その際に総合性と公的責任が必要なことを、釜が崎の貧困問題を取り上げた亀岡照子さんの報告を引用して述べるとともに、公・協・民の民主的共同を提起しました。さらに角橋徹也さんが政策決定での住民参加の問題をオランダの事例を紹介しながら提起したことに関連して、だれが主人公になるのかという問題を、神戸市長田区のまちづくり運動のリーダーであった毛利芳蔵さんの「住民参加でなく、住民への行政参加だ」という持論を引用して、住民自治の原則を指摘しました。
さて大阪市などが「国際集客都市」を将来像として描き、他方では地域で貧困が進行しているもとで、私たちはどのような未来像を描くのかが今回のテーマでした。
総括討論では、岩本智之さんが「サスティナブル社会」を、森詩恵さんが「福祉優先都市」を提案しました。二日間の討論を通じて、人間発達を保障する「人間都市」「福祉都市」、あるいはサスティナブル社会としての「環境都市」、何よりも重要な「自治都市」などが、キーワードとして挙がってきました。
これからも研究所の諸活動、おおさか自治体学校で取り上げていきたい課題です。
最後に、今回の報告者とテーマを紹介します。
(基調シンポジウム)
・地域と自治体政策〜「維持可能な内発的発展」と大阪大都市圏
遠藤宏一(大阪市立大学)
・くらしと社会保障〜大阪のもう一つの様相
中山 徹(大阪府立大学)
・まちづくりと環境〜まちづくりの経過と総括、二一世紀に向けた基本方向
中山 徹(奈良女子大学)
(地域経済と自治体政策)
・地域活性化での自治体労組の取り組み
亀原義明(守口市職員労組)
・活力ある地域づくりへ向けて
〜異業種・ものづくり集団=ナニワ企業団地からの発信
宅間俊昭(ナニワ企業団地協同組合)
(くらしと社会保障)
・釜が崎の不健康の実態と、脱却をめざして
亀岡照子(大阪市役所労働組合/保健婦)
・介護保険開始5ヶ月〜高齢者のくらしは
弟子丸孝子(よりよい介護をめざすケアマネージャーの会)
・子どもたちを人間として大切にする学校・教育をつくるために
今こそ、父母・国民の教育権を発揮し、教職員との本格的共同をすすめよう
加門憲文(大阪教職員組合/府立高校教諭)
(環境とまちづくり)
・市民の力で「日野谷」残土埋め立て阻止
藤田宏道(河内長野市環境を守るネットワーク)
・公共事業の民主的転換〜これからの国土整備と地域再生
浜辺友三郎(建築政策研究所関西支所)
文責:木村雅英(常務理事)