昨年末より大阪自治労連と共同で取り組んできた「都市財政研究会」が報告書を出版、『しのびよる財政破綻〜どう打開するか』(自治体研究社刊)の出版記念シンポジウムが2000年10月31日、大阪府庁別館さいかくホールで開催された。
このシンポジウムの開催準備の過程で大阪自治労連が当局との対話を広げ、和泉市長、寝屋川市助役をはじめ、15市町村の財政担当者等32名を含めて約200名が参加した。そのほか大阪府市長会会長、松原、岸和田、吹田、東大阪の各市長からも祝電・メッセージが寄せられるなど、「労使の垣根越え論議」(大阪日日新聞)をしたシンポジウムとなった。マスコミも六社が取材し、大阪日日新聞と赤旗が大さく報道した。
来賓あいさつでは、内田次郎・富田林市長のメッセージを谷暉登・総務部長が代読し、富田林市が1961年から68年まで赤字再建団体に転落した時期の苦労などが語られた。
主催者を代表してあいさつにたった町田豊治・大阪自治労連委員長は、「財政危機の原因をめぐって労使の対立もあるが、しかし危機打開のためには住民、労働組合、自治体当局がともに知恵と力を出し合い政策で共同していかなければならない」とシンポジウム開催の意義を強調した。
について、「研究会では数字のウラにある行財政運営、住民の暮らしをふまえた分析を行った。この間、今回の財政危機は一部の自治体で行ってきた大型公共事業の問返もあるが、枚方、豊中等の危機のように今回の問題はそう単純なものではない。人件費問題も聖域にせず議論もした」と短期間で深めた調査研究を行ったことを報告。
基調講演は重森暁・大阪経済大学教授(研究所理事長)が行った。重森氏は「全国で実質収支赤字の市町村23のうち大阪が8つあり(98年度決算)、大阪府内の衛星都市は全国で最悪の財政状況」で、しかも「これまで豊かな自治体といわれていた豊中、枚方が財政危機宣言を出すなど今回の財政危機の様相はこれまでとちがう」と指摘。また、今回の戦後第三の地方財政危機を、「国家財政危機と同時進行」、「先進国中最悪の地方財政赤字」、「大都市圏先行型の財政危機」、「借金依存体質の蔓延」として特徴づけた。
衛星都市財政の現状と財政悪化の原因を分析したうえで、危機打開への道にかんして次のような提起を行った。各自治体の「再建方策」の問題点を「危機感をあおるだけで原因究明が不徹底で、その方策も人件費抑制、福祉削減、民間委託が中心となっており、他方で投資的経費は継続し、結局は財政赤字の解消の見通しがないものとなっている」と評価。そのうえで、財政再建への道について、第一に「成長型財政から成熟型財政へ」転換すること。すなわち「ハコもの中心のインフラ整備からソフトなインフラ(人的サービスやネットワーク)整備」へ転換し、「経常予算と資本予算の分離」が必要であること、そして「市民参加型財政運営」に切り替えていくことを強調。第二に「分権的税財政システムヘの転換」として「補助金の大幅整理・縮小」、「地方交付税の簡素化」、「住民税・所得税の共通税化」を提起した。
報告書についてのコメントは自治体担当者および研究者によって行われた。
大崎康雄・岸和田市財政課長は、「歳出の自由度はあるが、歳入の自由度がない」地方財政制度の欠陥を指摘。当市でも五年間で地方債残高が五倍化し、深刻な財政危機となっていることを報告した。米谷忠年・堺市行財政見直し担当課長は、「大阪の場合人件費比率が類似団体と比べて高く、堺市では経常収支比率を1%下げるのに160人の職員削減が必要」と指摘、常に危機意識を持ち、行革を行っていく必要性を強調した。内藤正博・守口市財政課長(公用欠席のため代読)は、直営の公共施設が多く人口減少もあいまって人件費比率が高くなっている危機的現状を紹介した。
最後に、中山徹・奈良女子大学助教授は「どういう視点で財政を健全化させるか」が重要で、「行政本来の目的やあり方」について議論することが求められる。当面の再建策については「民営化や民間委託のように木の幹(制度)を切ってしまってはダメで、枝葉について市民的議論をすべさである」ことを指摘した。
シンポジウムのまとめにかえて重森氏が発言した。地方税法によって歳入の自治のない財政制度の間道点にかんしては国と地方の代表で構成する「地方財政委員会」の確立という制度改革が必要であり、財政再建にあたっては「社会的効率」の視点が重視されるべきで、たんなる収支の赤字の解消ではなく、市民生活が守れるような財政に戻すということが必要であることを強調して、シンポジウムを終えた。
文責 織原 泰