地方自治青年入門講座
「まちづくり政策セミナー」に参加して
大阪自治労連青年部 西岡 成子
「これからの自治体を担う青年を育てたい」と大阪自治体問題研究所で初の試みである青年入門講座が7月13〜14日開催されました。まちづくりでは全国各地でいい事例がありますが、大阪の自治体と似た自治体でのまちづくりを学べて、仕事の参考になるところを考え、今注目を浴びている長浜のまちづくりを選びました。
長浜市は滋賀県の湖北地方にあり、長浜城と豊臣秀吉で有名です。近年は「黒壁スクエア」が観光地として有名になり、年間200万人の観光客が訪れています。人口は5万7000人で製造業が中心の町です。
セミナーでは、まちづくりにかかわった方からの講演、タウンウォッチングをおこないました。講演は第三セクターの会社「黒壁」から商工会議所の吉井さん、長浜市役所市民主役課の伊藤さん、まちづくりに関するNPO「まちづくり役場」から山崎さんの3人です。それぞれの立場からこのまちづくりにかかわる者として、黒壁に対する熱い思いが語られました。
まちづくりは、明治時代に当時ではめずらしい洋風土蔵作りの銀行として建てられた建造物(通称「黒壁」)の解体という危機から市民が保存運動に乗り出し、保存とともに商店街の活性化にも取り組む第三セクター「黒壁」が誕生しました。歴史的建造物や街並みの保存と商店街の活性化をどのように取り組むのかと、数多くの会議をもち論議が繰り返され、そこで大企業を導入せず地元資本でできる独自の事業が考えられました。それがガラスです。そして周辺に残る古い建物の活用や、商店街の景観の統一、道路やアーケードの舗装などをおこなって女性を中心に人気となりました。
この事業で、地元住民の雇用が確保されたり、商業の活性化にもなっています。また現在は高齢者の働く場として「プラチナプラザ(シルバーをプラチナ・輝きにかえる)」が生まれたり、まちづくりをプロデュースするNPO「まちづくり役場」も作られました。まちづくり役場では、まちづくりの情報発信、観光案内、各地のまちづくりとのネットワーク、視察の受け入れ、そして後継者育成として市役所職員と民間の若手がまちづくりについての学習や論議をする「出島塾(講師の名前)」などがおこなわれています。これらからも分かるように、長浜のまちづくりはそこに住む人々が主体となってすすめられ、行政はバックアップする(市では「黒子」に徹すると表現)形をとっています。
これまで順調に発展してきた黒壁ですが徐々に観光客が減少していたり、周辺自治体との合併問題など新たな課題に直面しており、今後のまちづくりを模索しているという悩み、また民間と行政(第三セクターと行政)との関係での悩みや希望なども出されました。
セミナーで学んだことは、「まちづくり」は人と人のつながりと、そのまちへの誇り、そして「夢」を大事に取り組んでいるということでした。また、民間と行政のそれぞれのよさを活かしてまちづくりがすすめられていること、そして「まちづくりは終らない」と語られた言葉が印象的でした。
今回の取り組みには大阪府内の自治体職員や学生など20〜30代が中心に33人の参加がありました。労働組合を通じて誘いを受けた人、自分の仕事との関係で学びたいと参加した人などきっかけは様々ですが、講師に対して積極的に質問が出るなど、みんな熱心に聞き入っていました。そしてもう一つの目的であった参加者どうしの交流という点でも、宿泊することで時間を気にせず交流でき、話が盛り上がっていました。
初の試みとして始まった今回の青年講座は、いくつかの反省点はあるものの、全体としては成功であったと思います。第三セクターと聞くと大阪では借金ばかりが増える“悪”のもの、というイメージがありますが、今回の学習を通じて視野がぐっと広がったように思います。これからを担っていく自治体青年職員や学生がこのような機会を通じて学び交流できたことはいい財産でもあり、今後につながるものとなりました。
民主的自治体労働者として行政を担い、また仕事に対しても「誇り」をもって働ける、そんな自治体職員が増えるよう、この長浜のまちづくりと同様、先見性と柔軟性を持って今後も取り組む意義の大きい取り組みであると思います。
ただし、残部数の関係でご希望に添えない場合もあります。また有償によるものもありますので、ご承知おきください。
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