第6回おおさか自治体学校
   ― サスティナブル・シティ大阪をめざして

 8月31日(土)〜9月1日(日)おおさか自治体学校が、柏原市のサンヒル柏原で開催されました。厳しい残暑にもかかわらず114名の方が参加しました。

 今年のテーマは「サスティナブル・シティ(維持可能な都市)・大阪をめざして」。聞きなれない用語だという声もありましたが、中身としてはわかりやすく水準の高いものとなりました。

サスティナブル・シティとは何か

 塩崎賢明・神戸大学教授が「サスティナブル・シティの課題と政策」について次のように基調講演を行いました。

 ―20世紀末の地球環境問題に対する対応としてEU諸国が積極的に取り組んだなかで、サスティナブル・シティという考え方が出てきた。その一環として「コンパクトシティ」論も出てきたが、日本では90年代以降地球環境問題の取り組みが遅れ、サスティナブル・シティへの具体的取り組みも遅れている。神戸市などではようやく「コンパクトシティ」という理念を入れた計画も出はじめているがまだまだである。

 維持可能な都市環境の再生のためには次の点が重要である。(1)環境政策をすべての政策の前提に、(2)西淀川など公害地域の環境改善、(3)公共交通ネットワークの充実・交通負荷の軽減(路面電車の導入など)、(4)都市開発を地球環境の観点から見直す、(5)建設活動のグリーン化、(6)「都市再生」、都心居住策の見直し、(7)都市計画法制・総合計画などの見直し。

 「日本型サスティナブル・シティ」への提言として、(1)国土レベル―海、河川、森林、農地の荒廃を止める、(2)大都市レベル―異常な東京一極集中を改める。「都市再生」政策は反サスティナブル戦略である。(3)地方都市レベル―中心市街地活性化など安易な再開発はやめるべき。ぜひとも日本でも先進モデルをつくる必要がある。

 サスティナブル・シティの理念とその実践が地球環境問題にとっても地域の再生にとっても必要なことが、具体的に解明されたわかりやすい内容でした。

 今年もセッション(全体会)方式ですすめられ、〈第Iセッション〉経済と地域の営み、〈第IIセッション〉そだち・くらし・環境、〈第IIIセッション〉住民自治と自治体、の3つのセッションで報告と討論を行いました。詳細は紙幅の関係で省略します。

 全体的な印象として、サスティナブル・シティという基調が全体を通して貫かれたのではないかと思います。

 また、第Iセッションでは「地域内循環」、第II、IIIセッションでは、「地域」(地域限定の異職種間住民の交流)や「市民」(共同学習、エンパワーメント)というキーワードが浮き彫りにされたように思います。

地域の再生のために ―維持可能な社会への再建

 最後に、重森曉・大阪経済大学教授がまとめを行いました。

 ―日本社会の状況は、地域や経済・環境などどの分野をみても「サスティナビリティ」(維持可能性)が深刻であり、「地域内循環」をキーワードに公共交通をはじめエコ・システムのネットワークをつくっていく必要性、また、現在民営化・市場化など経済的効率性が問題にされているが、これからは長期的観点にたって人間発達を重視した「社会的効率性」という考え方が重要であること、そして政策的には地域における異職種間のネットワークづくり、地域―国―国際間の政策的合意、住民の共同学習が重要である。

 参加者からは、「社会における問題、またそれにどう立ち向かうかといったキーワードが、ちりばめられていてとても勉強になった」、「自治体職員から一市民になれた」などさまざまな感想が出されていましたが、全体として好評であったと思います。

 今回の自治体学校の蓄積を活かし、各地域での調査研究・政策提言活動、市民運動に生かせていければと願っています。

(文責 織原)

【資料】〔プログラム〕

基調講演
「サスティナブル・シティの政策と課題」塩崎 賢明

〈セッション?〉経済と地域の営み
「私たちの栽培した綿が「製品」になった」  きしわたの会 木村 元広
「大阪で農業は成り立つか」  農民組合大阪府連 山口 和男
「地域経済とコミュニティバンクの役割」  八光信用金庫 三埜 敦也
   コーディネーター:遠州尋美(大阪経済大学)
   討論者:鎌倉 健(大阪樟蔭女子大学)/岡田 一郎(研究所研究員)

〈セッション?〉そだち・くらし・環境
「ふたたび動き出した大型公共事業」  安威川ダムはいりまへん大阪府民会議 村上 廣造
「大東市公立保育所民営化反対運動について」  大東の保育を考える会 大西 泰治
「環境活動報告」  大阪いずみ市民生協 林 志津子
   コーディネーター:中山 徹(奈良女子大学)
   討論者:川口 啓子(大阪健康福祉短期大学)/長友 薫輝(龍谷大学大学院)

〈セッション?〉住民自治と自治体
「住民無視の強引な『来年4月合併』を撤回させる」  富田林の合併とまちづくりを考える会 奥宮 直樹
「住民が市財政に関心を持ち、取り組み始めたこと」  泉大津の財政を考える市民の会 森田 肇
「新しい社会発展としてのNPO活動」  吹田市民NPO 高橋 清美
   コーディネーター:初村 尤而(都市行政コンサルタント)
   討論者:柏原 誠(三重短期大学)/黒田 充(研究所研究員)

上記、行事での当日配布のレジュメ・資料等、及び報告集等について必要な方は、(社)大阪自治体問題研究所までお問い合わせください。

ただし、残部数の関係でご希望に添えない場合もあります。また有償によるものもありますので、ご承知おきください。