6月7日(土)午後、大阪自治体問題研究所第30回定期総会が、北区天神橋の大阪グリーン会館2階ホールで開催されました。総会には64名の会員が出席、書面出席(委任状)628名を含め692名の出席となり、定款上の成立条件(正会員〈1094名〉の過半数の出席)を満たしました。
参加者の承認により、中村晶子・堺市職労副委員長、長友薫輝・龍谷大学大学院生の議長が選出され、議事がすすめられました。
開会のあいさつにたった重森曉・理事長は、日本の地方自治が「不安と危機」に直面し、曲がり角に立っている。第27次地方制度調査会が2005年3月以降も合併をすすめることを報告。地方分権改革推進会議も税財源委譲を先送り、地方交付税を廃止し共同税をつくり、財源保障機能を廃止することを主張。そういう中で、研究所は関西地域問題研究会を中心に関西全域を視野に入れ、都市―農山村の連携をすすめる提言を行っていきたい、その際のキーワードは「持続可能性」(環境、経済、自然、空間、文化の5つの側面がある)であることを強調しました。
2002年度事業報告(第1号議案)は木村雅英・常務理事が提案。2年半をへた関西地域問題研究会は出版の段階に入っていること、その過程で中間的アウトプット(『検証・市町村合併』自治体研究社)を出版し成果をあげている。労働組合などと共同して調査を行っている受託調査・自主研究会、学習教育事業、機関誌発行事業、組織財政、国際交流事業について報告しました(『おおさかの住民と自治』6月号参照)。
2002年度決算報告(第2号議案)は、織原泰・事務局長が提案。02年度は全体として経常的収入で経常的支出をまかなうという財政構造に到達していないことを報告。持続的な会員拡大が必要であることを強調しました(『おおさかの住民と自治』7月号5〜9頁を参照)。
会計監査は、村中貴・監事が報告。監査は外部、内部両方で厳格な監査をし、適正な財政管理が行われているが、意見として会員・読者の拡大、図書の普及に力を入れるべきことを指摘しました。
2003年度事業計画(第3号議案)は、中山徹・副理事長が提案。地方自治や地域のあり方がこれほど議論されている時はなく、こうした情勢に対してどのようなビジョンを出していくかが問われているとして、事業計画では9つのテーマをあげ、とりわけ地方独立行政法人法によって、あらためて公務労働のあり方が問われていることを強調、受託調査をはじめ情勢に的確に対応した事業を展開していくことを提起しました(『おおさかの住民と自治』6月号参照)。
2002年度予算(第4号議案)は、織原事務局長が提案。全体として厳しい現実を前提とした控えめな予算を組んだことを報告しました(『おおさかの住民と自治』7月号10〜11頁参照)。
第5号議案として、前田美子・理事が役員の一部改選を提案。4名の理事を紹介しました(前掲書12頁参照)。
理事会からの提案を受けて、討論に入りました。14人の方が発言され、活発な討論となり、予定の時間を大幅に超えました。
宮本会員(能勢町会議員)は、身近な地域・財政問題について研究したいが、その支援機能を研究所は果たしてほしい。テキスト・講師の紹介などの情報を流してほしいと要望。
飯田会員(大阪消団連)は、食の安全問題や政府の税制改革問題で運動しているが、自治体労働者と連帯して、自治体や生活の場から運動を組み立てることの重要性とタテ割ではなく横断的な運動の必要性、その中での自治体労働者の役割の重要性を指摘しました。
林会員(大阪市研究会)は、先日100回の例会を迎えた大阪市研究会のあゆみを紹介。市民生活や地域経済の解明など課題は多いが、今後とも魅力ある企画で続けていくことを表明。
星会員(堺市職労)は、美原町との合併が急浮上し法定協議会が開催されるが、来年4月調印、来秋合併して、2006年には政令指定都市に移行という流れになっている。合併が政令市移行への単なる手続きになっており、現市長は、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)の視点にそったかたちで市民サービスを切り捨て、公共事業推進を図ろうとしている。これに対し自治体らしい自治体をどうつくるかを、市民に問題提起し、今の路線に歯止めをかける運動をつくっていきたい。研究所にはめまぐるしい全国情勢の展開を分析するなどの役割を果たすことを要望する、と発言しました。
福田会員(門真市会議員)は、守口・門真法定合併協議会が6月5日に開催されたが、規約には入らなかったが「合併の是非」をめぐって議論していくことを確認した。法定協議会の問題点は一般的な協議項目のみで、住民の意思確認については具体化せず、新市計画も10年間のみで20年間にはならなかった点である。こうした中で住民の中に合併問題への関心を高めていく必要があると問題提起しました。
吉田会員(高石市職労)は、高石の合併問題は『住民と自治』7月号を見ていただきたい、堺市との合併の最大の争点は財政問題であり、労組として十数年前から財政分析活動の蓄積があったので的確な対応ができたと自負している。さらに研究所とのネットワークが非常に役に立ち、次々と研究所の研究者に講師として来ていただいた。これからは、財政危機の中で提案型の運動が必要であると強調しました。
川津会員(大阪府職労)は、地方独立行政法人法案について、自治体の仕事のほとんどの業務を市場化する法案であり、自治体をなくすものであり、大阪府では府立大学、病院、研究所が狙われている。府民的な運動を組む必要がある。特区の問題であるが、公務員の非常勤化が企てられている。来年には知事選があり、府政の中身を研究して、民主的な府政をつくるために、府政研究会を立ち上げており、研究所にも協力を要請する、と発言しました。
初村会員(研究所理事)は、研究所の課題として一つは、即応力のある調査活動が情勢が急速に変化する中で求められている。そのような体制をつくる必要がある。二つめは現場のうごきに応じた対応。NPM、行政評価、事務事業評価システムなど新しい手法を行政が次々と導入しているが、原則論的な提言だけでなく、的確なコンサルティング機能も求められている、と強調しました。
近本会員(大教組)は、岸和田市で市民と共同して人口の4分の1の署名を集めて35人学級を実現させたことを報告。
片岡会員(枚方市職労)は、これまで研究所と財政分析活動を行ってき、昨年市内7ヵ所で住民懇談会を行い、枚方版の自治体学校を行い、住民が財政運営も含めて主人公になるよう取り組んできた。しかし、枚方市財政はさらに悪化し、市民にしわ寄せをし、公立保育所の民営化提案をしてきた。最大の理由は公私間の格差であるが、当局と市民サイドの運動がすれ違っている。そういう意味ではイデオロギー面を明確にし対抗軸を据えることが必要で、その分野での研究所の役割に期待したいと結びました。
有田会員(吹田市職労)は、吹田市長選の教訓として市民との共同がすすんだことを紹介、吹田独自でまちづくり研究会をつくる必要性を提起しました。
廣瀬会員(中津コーポ高速道路に反対する会)は、淀川左岸線高速道路問題、大阪市内の自然環境をどのように守るかについて発言しました。
中村会員(大阪市労組)は、住民への啓発活動には本離れがすすんでいる中で、ビデオライブラリー、オートスライド、マンガなどを取り入れる必要があるのではないかと問題提起しました。
藤永会員(研究所理事)は、会員になってくれる人を紹介してほしいということを強調しました。
討論を受け、答弁にたった木村常務理事は、第一に研究所をフルに活用してほしいこと、理事会としても町村問題をとりあげ、研究会を立ち上げていくということ、第二に関西地域問題研究会の出版は府政との関係で急いでいくこと、第三に地方独立行政法人化やNPM問題についてもどう対応できるか検討していく、第四に速効性のある課題については集中的に対応できる体制整備を検討すること、第五にホームページによりできるだけ多くの情報発信を工夫していきたい、と発言しました。 議長は、反対意見がないことを議場に確認し、全会一致で全議案を拍手で採択しました。
閉会のあいさつにたった遠藤宏一・副理事長は、府知事選・大阪市長選という二大課題があり、関西地域問題研究会はそれらを意識してぜひとも秋には出版していきたい。地方独立行政法人問題に対抗して、公務労働論を本格的に展開しなければならない時期に来ていることを提起、「市場化」と「国家化」(ナショナリズム)の中で、この1年間の活動を行うわけだが、今日の基調講演はサスティナブルだったが、研究所の会員だけは量的成長を止めてはならないことを訴えました。
(文責 事務局 織原 泰)