第37回定期総会は大下憲二理事の司会ではじまりました。飯田秀男理事が議長に選出され、中村晶子さんと横溝幸徳さんを議事録署名人に選出されました。藤永延代副理事長が、当定期総会が定数923人のうち委任状が467名で27名の出席があると報告。議長は過半数以上の出席のもと本定期総会は有効に成立していることを確認しました。
冒頭挨拶に立った鶴田廣巳理事長は、つぎのような挨拶(要旨)が行いました。
「昨年9月に歴史的な政権交代があった。そのあと、抜本的に変えてもらいたいという国民の期待に対して、鳩山民主党政権は、わずか8カ月で国政を国民の声が聞き得られなくなった。そして6月8日に新しく菅内閣が発足する段階を迎えている。この間、鳩山民主党政権のもとで進められていた地域主権改革は、ある意味では理想主義的な地方自治の在り方、住民自治の在り方を提起していますが、問題は、どういう内容の地域主権であるのかです。また、財界が主導してすすめられている関西州だとか、市町村への権限委譲の問題だとか、あるいは大阪市と堺市の再編を中心とする「大阪都」構想などが橋下大阪府知事の「維新改革」として取り組まれようとしている。いずれにしても、自治体の役割をどのように高めるのか、住民自治をどのように発展させるのかが、来年の一斉地方選挙を前にして鋭く問われている。そのような中で大阪自治体問題研究所としては、ますます研究所の役割を発揮することが期待されている。今年度は、大都市圏研究会の共同研究の成果を世に問いたい。同時に新公益法人の一般社団法人への移行をするということを重点に進めていきたい。そのために一層の会員みなさんのお力添えをお願いしたい」。
1号議案の2009年度事業経過報告と2号議案の2009年度決算報告と第4号議案の2010年度予算案を谷口積喜事務局長から提案。また2009年度会計監査報告を梶理事から受けました。さらに、第3号議案の2010年の事業計画と第5号議案「一般社団法人への移行の件」について久保常務理事より提案が行いました。後述のとおり、3人より提案に対する意見を受け、第1号から第5号までを全員の拍手にて、採択。引き続き第6号議案の役員改選について藤永延代副理事長より提案があり、全員の拍手により承認されました。新任の理事を代表して梅田章二弁護士より「新しい定款づくりにすることになりました。地方自治のあり方が、橋下「行革」あるいは民主党政権のもとで大きな課題に直面しているなかで、役割を発揮したい」との決意表明がありました。
久保常任理事が行った「一般社団法人の移行に関する件」の提案理由の要旨は次のとおりです。
2008年12月1日に国の法律として公益法人改革三法というのが施行されました。いままで社団法人とか財団法人とかありましたが、それらを規定している法律が変わりました。改めて今まで社団法人であったところも財団法人であったところも、そうでなかったところも、法人格としての資格をとって活動するのであれば、どの法人でやるのかが問われる。2013年の11月30日までにどの法人で選択するのか問われています。
公益社団法人というのがありますが、これは行政の外郭団体を想定しています。財政運営や事業運営にかなり厳しい条件がつけられる。いろんな点でのメリット、デメリットを含めた検討が必要です。この度の公益法人改革三法を検討してきましたが、現状の研究所の活動を活かしていけるということを踏まえた上で、本総会では、選択肢として一般社団法人を取得するということを提案したいということです。その選択のための方向に踏み切りたいという提案をさせていただきます。
そのために定款を提出するだとか、それに必要な手続きなどがあります。最終的には来年の定期総会において正式に定款変更および一般社団法人への手続きをするために、理事会としても検討し、また主務官庁である大阪府とのいろんなやりとりをしながら、一般社団法人へ移行するということです。参考資料として一般社団法人のモデル定款案を出しています。これについてのご意見を頂き、必要ならば修正も図りながら、1年後の定期総会で決めていただくという提案です。
各討論者の発言要旨を以下に紹介します。
中村晶子さん(堺市職員労働組合)
昨年8月に堺市政白書を刊行することができました。昨年秋に堺でも政権交代がございましたが、オール与党の現職市長が橋下知事の応援する市長候補に破れるという事態が起こりました。このこと事態はマスコミのいろいろな報道とか、橋下知事への人気も大きく作用したと思いますが、われわれ自身が市政白書を通して、オール与党市政のさまざまな問題点を明らかにしたその成果が、市民の意識を変えたという点も大きかったのではないかと、考えています。この市政白書を土台に今後とも堺市政を今後とも問い直す、職場の運動や住民運動を頑張ってやっていきたいと思っております。
そのひとつの事例として、シャープ公金支出に関する住民訴訟があります。いま4回まで審理が終わり、いよいよ今年1年かけまして大阪府の府政のあり方と、この莫大な補助金、公金を支出することが「住民の福祉を増進する」という公益性があったのか?自治体の使命に照らして果たして妥当だったのか、同じように堺市はどうだったのか?問われることになります。堺市の実情で言いますと、政令市になって以降、国民健康保険料や下水道使用料が、政令市でもっとも高い公共料金を市民に賦課しながら、シャープには莫大な税の減免という形での財政支援を行い、莫大な税金をかけた基盤整備も同時に行っている。
公金の使い道というのが、どういった手続きのもとで行われたのか、あるいは、規制について住民の目から厳しく法定の場で問い直す。先日は三重県での事例も取り上げて、操業開始後わずか6年で工場を売却して中国に進出している。結局、いま補助金返還問題に発展しているのですが、そういった非常に足の速い先端産業に公金をつぎ込むことの、是非が問われている。そういったお金の使い方よりも、むしろ地域経済の視点から、中小企業の支援や、まちづくりに関する生活の貧困を克服するといった内容のものを追求すべきではないか。市民のなかにいろんな発信をしながら、訴訟をすすめたいと考えている。
堺市政の今後の状況が、橋下府政に向かうのか、真の住民参加をなしうるのか、あるいは、橋下府政に追随して大阪都構想などを受け入れて地方自治を破壊する方向で進むのか、市長の政治姿勢の問題もある。われわれの住民運動が問われていると思います。
広瀬平四郎さん(中津コーポ高速道路に反対する会)
今日発言したいのは情報公開請求での裁判問題です。私どもの団体が、平成20年7月15日に大阪地方裁判所へ国土交通省を相手に、文書開示処分取り消し請求を行いました。地裁は請求棄却の判決を下しましたので、高裁へ上告しました。しかし、高裁も地裁の判断を踏襲して控訴棄却を行いました。ところが、裁判には負けましたけれども、実質的には勝利した内容だったわけです。国土交通省は答弁書のなかで「似通った文書がございます」ということを答弁書のなかで出してきました。
そこで、私たちはその文書を請求しましたら、開示されました。それはまさに、当初私たちが国土交通省に請求した内容そのものでした。裁判所は、私たちが請求した請求内容の「文書」が悪いというのが理由で棄却したのです。この裁判のなかで、情報公開で国土交通省のなかで改善された点は、文書特定については請求者はまったくの素人ですから、国がどのように作ったのかまったく判らないのです。本来は国側が、当然請求されるであろう文書を探し出してきて、「こういう文書ならありますよ」と、提示するのが当たり前なのです。そうしなかったために、裁判になったのです。その後は対応の仕方も変わりました。前は係長級が対応していましたが、たとえば淀川河川事務所などに請求しますと、総務課長が対応するようになった。局のほうでも課長級が対応すると変更しました。
そういう意味で、情報公開というのは市民が行政の情報を知るための重要な手段となります。行政の場合、本来は情報公開をしなくても開示するという姿勢ではなくて、情報公開をすれば開示する(せざるをえない)という悪い癖がついています。もっと国とか地方自治体とかに対しては、情報公開を請求しなくても、当然公開すべき情報については市民に開示すべきではないかと思います。
赤澤勝さん(和泉市職員労働組合)
今年1月から保育財政調査ということで、共同調査を研究所の方でお力添えをいただいております。8年ほど前にも保育所の民営化問題がありまして、その時も研究所の先生方のご協力をいただき、保育子育て政策をまとめさせていただきました。今回の民営化の計画は、新たな保育所の統廃合案ですが、地域性もあり一般的な民営化反対というのだけでは対応できないということで、研究所のお力添えをいただき、政策化するということになりました。
今回問題となっていますのは、ダム建設問題で揺れております槇尾川の河川改修計画が、大阪府で計画されておりました。計画にあたって保育園の敷地が計画に当たっているので、移転もやむを得ないと考えておりました。研究会では、河川改修問題そのものがそれで果たしてそれでいいのかどうかも含めて検討することになりました。保育士が河川改修問題を考えるということになりました。そういう例はあまりないと思っております。安全な治水対策というのは、大阪府が計画しているようなものではない。安全な治水計画をつくることによって、結論は今の保育所もなくす必要もないということで提言まとめていこうということです。
もう一つは、少子化がすすむ大阪外環状線沿いに小規模の公立保育園が2園あるのですが、そこは三歳児以上の保育しかやっていない。地域的にもそこで子育てができないということで、若い夫婦が市の中心部や他市へ転出して行く事態で少子化がすすんでいます。そこでは20人も満たないという状況で、統廃合をして新たな民営園をするというのが当局の提案です。そこの子どもをバスで運んで、待機児の解消を図るというものです。当局的には一石三鳥の計画であった訳ですが、この点については新たな将来像構想というものを打ち出す必要があると考えました。いま私たちとしても、その地域でも安心して子育てができるようなモデル地域にしていこうと構想を持とうと考えています。
研究調査活動には保護者も入り、そんなことをやっているんだったらと関心を持っていただき、保護者との連携にも役立っています。運動はこれからですが、その到達点を活かしていきたいと考えています。