トップ  >  活動報告  >  大阪市地域活動協議会調査報告会を開催 [2014.6.24]

 2014年6月7日(土),大阪経済大学にて,大阪市地域活動協議会調査報告会(共催:大阪自治体問題研究所・大阪経済大学柏原誠研究室)を開催しました。

  「地域活動協議会(地活協)」は、大阪市が従来の町会や社会福祉協議会と連携し、これまで関わることの少なかった若い世代、NPOや企業と一緒に地域課題に取り組むため,平松市政期にモデル導入し,橋下市政では,市政改革プランで「ニアイズベター」の一環として補助金改革とセットにして強力に導入を推進してきました。

 本研究所では,機関誌「おおさかの住民と自治」2014年5月号の特集企画として,導入後1年を経過した地活協をとりあげ,大阪市のコミュニティ政策を検証しました。地活協の実態や導入後の変化や制度の評価を内容とした全地活協へのアンケート調査(回収率33.7%)や,市政改革室や中間支援団体,地活協へのヒヤリング調査からなる調査結果の分析を,地活協関係者に還元し,大阪市のコミュニティと住民自治の発展を目的として開催しました。

 報告会には,地活協役員をはじめとして,大阪市市民局や複数の区役所の地活協担当職員,まちづくりセンター職員,研究所会員など50名の参加を得ました。

 報告会では,研究所理事で大阪経済大学の柏原誠准教授から,地活協アンケート調査の結果の概要についての報告がありました。制度としての地活協の評価は,役にたつと答えた団体は,1/3にとどまっていること,「役にたつ」と答えた団体では,広報への注力や,部会主体,事業中心の運営が実現していること,NPOや民間助成金などの新たなリソースにアクセスできているなどの結果分析が示されました。地域による条件の違いから,条件不利な地域への行政のサポートの必要性,地活協の評価と住民自治の発展は分けて考える必要があるとの指摘がありました。

 栗本裕見・大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員は,全国の地域自治組織を調査した成果から,大阪市の地域活動協議会を決定と執行を行う組織だと位置付ける一方,この形だけではないことを紹介しました。予算の使途についても,全国の事例から,メリハリを付けたり,事業実施は地域で設立したNPOに委託するなど多様であることを示しました。その上で,地域自治組織に求められる活動などについて問題提起がされました。

 佃孝三・大阪自治体問題研究所研究員は,橋下市政下で進められた地活協の導入が,枠組みを強制する上からのコミュニティ再編であり,住民自治から最も遠い位置にあると指摘,住民自治を制度としてではなく,運動と位置付け,住民の喜怒哀楽を含みこんだ自発性・自主性・自己決定権・実行力・合意形成力・課題学習力・共感力などが必要だと指摘しました。いまの地活協の制度をそのまま無理に進める必要はない,主権者は住民なのだから,地域の条件の違いを包み込んだ選択可能な方法を模索したら良いと提案しました。

 約30分の質疑応答では,若い人と言っても,地域の高齢化が進んで担い手が見いだせない,マンション開発業者はコミュニティ活動をしなくても良い点をセールスポイントにしているなど,コミュニティの持続性そのものを悲観する意見も出ました。地活協で防災訓練がが住民目線に変わったと地活協の制度を積極的に評価している人からも,収益活動をしなさいと言われて,地域のまつりでビールを売ろうとしたら,補助金の規定に違反すると後で言われて補助金を返還したという,区役所の対応の混乱を指摘するエピソードもありました。

 本研究所では,今後も大阪市のコミュニティについて調査・研究を進めていく予定です。

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