「大阪都」構想の住民投票実施のための協定書決定に対する声明
2015年 1月19日
一般社団法人 大阪自治体問題研究所理事会
(1)「大阪都」構想については、昨年12月30日に法定協議会が再開され、1月13日の会合で協定書が改めて議決された。「都」構想は、法律の定めるところでは、大阪府市の代表者から構成される法定協議会で「大阪都」の制度設計に関する協定書を作成した後、大阪市会・府議会双方の承認を得た上で、大阪市民の住民投票に付す手順である。協定書は、法定協議会で昨年7月に一度議決されたが、それは10月に両議会双方で承認の提案が否決されていた。
ところが、昨年12月の総選挙後、公明党が「都」構想に対する姿勢の転換を表明した。同党は、最終的には住民投票をもって住民が決定をすべきであるとの理由から、両議会の2月定例議会で協定書の承認に賛成し、住民投票の5月中旬実施を認める方針だという。それで法定協議会の再開に至ったが、今後は住民投票まで手続が進み、「都」構想の行く末はその投票結果次第となる見通しである。
(2)昨年7月の協定書とは、維新所属以外の委員を排除し、大阪市会を代表する委員の参加もないまま強引に作成されたものである。排除された中には公明党所属の委員も含まれ、府市両議会では公明党も協定書の承認提案に反対票を投じた。新たな協定書も、わずか2回の会合でまとめられたもので、昨年の協定書からほとんど変更がない。公明党は、協定書の内容に反対の姿勢に変わりがないとしている。
しかし、「大阪市の消滅・解体」である「都」構想の中身が住民に十分知られておらず、しかも不備が多いことを承知の上で、「都」構想の当否についての最終判断を住民投票に委ねるというのは、政治の怠慢以外のなにものでもない。仮に「都」制に移行して不備が露呈したときには政治責任を住民に押しつけることを意味し、議員としても政党としても無責任だとのそしりを免れない。
また、政策の決定を住民投票に委ねることが当然に民主主義的ということもできない。住民投票は、とくに権力者の主導によるとき、十分な議論を欠いたまま政策を強行する手段として、すなわち少数意見を抑圧する手段として濫用されかねないからである。住民の未来に重大な影響を及ぼす政策をめぐって首長と議会の見解が対立した場合にあっては、まず両者でとことんまで議論を尽くし、それでも一致しないときには首長または議会の選挙をやり直すのが現行地方自治法の原則である。
ましてや、大阪市民にとっては依って立つべき自治体である『大阪市が消滅する』という一大事を、具体的中身の説明のないままの強行は許されるものではない。
橋下市長の民主主義観は、議会の存在意義を極めて否定的に評価するものであり、これに安易に同調してはならない。
(3)「都」構想については、すでに両議会で協定書が一度否決された以上、ほんらい協定書づくりに立ち戻ってやり直す必要がある。適正に構成された法定協議会で制度設計を再検討し、「都」制移行が必要という結論になれば改めて協定書を決定して、両議会の承認を得た上で住民投票を実施するのでなければならない。
当研究所は、現在の「都」構想に対しては問題点が多々指摘されてきたことにかんがみ、住民投票を用いて民主主義の名で多様な意見を封じることなく、拙速を避けて議論を尽くすことを求めるものである。
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