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「総合区・特別区(新たな大都市制度)に関する意見募集・説明会」の開催に関する声明

2016年8月31日
大阪自治体問題研究所 理事会

本音は、IR・カジノ誘致、大規模開発の資金づくりのための「大阪都構想」復活

はじめに

 大阪府・大阪市は、「総合区・特別区に関する意見募集・説明会」を8月31日の此花区を皮切りに、来年2月まで24行政区で順次開催すると公表しました。

 大阪市民にとって聞き覚えのない「総合区」や昨年決着済みの「特別区」をテーマにした「説明会」のため市民の関心は薄く、此花区の参加者募集では申込締め切りを10日間延長する低調ぶりです。

 大阪府・大阪市は、今回の「説明会」について「『副首都・大阪』の確立に向けた新たな取り組みを進めるとともに、大都市の課題解決に向け総合区制度・特別区制度について検討している」「今後の制度案づくりの参考としていくため、市民の皆さんのご意見を直接伺う機会を設ける」としています。

 大阪都構想への再挑戦を繰り返し表明してきた松井知事と吉村市長が、なぜ「特別区」とは違い大阪市が存続する制度である「総合区」を含めた「説明会」を行うのか、その意図と背景を考える必要があります。

大阪市を解体し「特別区」を設置する案、昨年5月17日の住民投票の結果は重い!

 昨年5月17日に行われた「大阪市廃止・特別区設置」についての住民投票は、反対票705,585、賛成票694,844(投票率66.83%)となり、大阪市を解体して「特別区」を設置するための「協定書」は否決されました。この住民投票に、大阪市は市税約9億円を費やし、「説明会」の開催や「協定書」パンフ170万部を発行しました。また、「日本維新の会」(後に分裂、合併で消滅)は政党助成金を4億〜5億円使ってテレビCMや大量のビラを発行し、「ワンチャンスだけ」「ラストチャンス」「二度目の住民投票の予定はありません」などと繰り返し、市民の危機感を煽る宣伝を行いました。

 この10,741票差での否決によって、橋下前大阪市長は政界からの引退を表明したのでした。大阪市民が下した否決という結果は大変重いものであり、維新の会としても重く受け止めるべきです。

 ましてや、否決された「協定書」を「説明会」の資料にするなどもってのほかです。

総合区でなく、大阪市解体・「特別区」の設置が本命の知事・市長

 吉村市長は、地域政党「大阪維新の会」のとりくみとして本年2月から「大阪都構想意見交換会」を大阪市内24行政区で開催してきました。また、松井知事は「特別区」実現への思いを繰り返し表明しています。

 「大阪都構想」の真のねらいは、大阪市を解体してその権限と財源を奪い、カジノ・IR施設の誘致に絡む大規模開発につぎ込むことにあります。吉村市長が9月1日から関西財界人とともにシンガポールを訪問し、カジノを含む施設を視察しますが、カジノ誘致に前のめりな姿勢が改めて鮮明になっています。

 「特別区」の住民投票を実施するには、「法定協議会」を議会が再び設置し、新たな「協定書」も議会での議決を必要としますが、その工程など一切明らかになっていません。一方、「総合区」は公明党の意見を取り入れて大阪府・市が案としてまとめたものです。

 知事・市長のねらいは、「総合区」を主張する公明党を巻き込んで、「総合区」か「特別区」かの住民投票の実施を口実に、もう一度大阪市解体・「特別区」設置の住民投票をめざしているのです。

 今回の「説明会」は、このような不純な意図に市民を巻き込み、不毛な二者択一を市民に迫る入口となるものであり、到底承服できるものではありません。

 不毛の制度いじりではなく、大阪市民の厳しいくらしを応援する市政の実現や大規模災害に強い大阪市にするため、大阪府・大阪市のとりくみを強く求めます。

「総合区」と「特別区」との違い

 2014年の地方自治法改正で政令指定都市に「総合区」の設置が可能となりました。「総合区」は指定都市の市長の権限に属する事務のうち、主として総合区の区域内に関するものを処理するために、行政区に代えて総合区を設け、議会の同意を得て選任された区長を置く、都市内分権です。総合区長の権限は、総合区の政策・企画の立案、まちづくり、住民の交流促進、福祉・保健サービスの事務など市を代表して執行します。また予算について、市長に対する意見の具申権を持ち、より住民の意見が反映されやすい制度です。

 一方、「特別区」は政令指定都市である大阪市を廃止して分割(合区)し、府の内部団体にするとともに、権限や財源の多くが府に吸い上げられるなど根本的な「統治機構の変更」となります。

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