2019年11月29日
大阪万博の再検討と府民的な議論を呼びかける声明
一般社団法人 大阪自治体問題研究所 理事会
11月23日、BIE(博覧会国際事務局)総会で、2025年万博の開催地が大阪に決定しました。大阪自治体問題研究所は2016年11月14日に「大阪万博の夢洲での開催に反対する声明」を出しています。今回の決定を受け、改めて大阪自治体問題研究所の見解を声明としてまとめます。
(1)大阪万博を夢洲で開催することについては反対します
今年の台風21号でも関西国際空港、大阪湾の埋め立て地帯は大きな被害を受けました。東南海沖地震が発生しますと臨海部では甚大な被害の発生が予想されます。大勢の観光客が人工島である夢洲から迅速に避難するのは不可能であり、観光客の安全に責任を持てません。また、夢洲は廃棄物処分場であり環境面から見て万博開催地に不向きです。まだ使える処分場を万博用地に使ってしまうと、別の場所に新たな処分場を確保しなければならず、大阪の環境に大きな負荷をかけます。さらに、夢洲は人工島のため観光客を運ぶインフラが整備されていません。これから鉄道や道路などを整備しなければならず、巨額の税金投入が必要となります。これらの点から夢洲は万博開催地としては不適切です。
(2)カジノを誘致するための万博には反対です
大阪府・大阪市は、万博の隣接地にカジノを誘致しようとしています。カジノを誘致するためには様々なインフラ整備が必要ですが、万博がその露払いに位置づけられています。そもそも大阪にカジノは不要であり、カジノを誘致するための今回の万博計画には反対です。また万博をこのように利用するのは万博の趣旨にも反します。
(3)府民的な議論抜きの万博開催には反対です
万博を大阪で開催する場合、大阪府や大阪市には多額の財政負担が発生します。万博の経済効果が期待されていますが、短期間のイベントである万博そのものには持続的な経済効果は期待できません。税金の使い方として妥当かどうか、万博よりも効果的な経済対策がないのかどうかなど、万博誘致については広く府民的に議論すべきです。しかしそのような議論が進んでいるとは思えず、府民の十分な議論を踏まえない今の進め方には反対です。
(4)万博招致活動について府民への説明を求めます
マスコミ報道によりますと今回の招致活動での支出は35億円との報道がありました。大阪府・大阪市が進めた招致活動について、どのような財源で、誰に対して、何のために経費を費やしたかを説明すべきです。万博は府民の理解を得て進めなければなりません。そのためには透明性が不可欠であり、大阪府・大阪市は府民に対して説明する義務があります。
以上の点から考えますと、今回の提案内容に沿って大阪万博の準備を進めるのは危険であり、大阪の品位を損なうものです。大阪万博の計画を再検討すると同時に、イメージに流されない府民的な議論を呼びかけます。また、一部のマスコミ報道では、万博用地の隣接地にカジノを誘致することが既定路線のように書かれています。しかし今回決定したのは大阪万博の開催であり、カジノ誘致については全く未定であることを確認しておきます。
統一地方選挙の争点と展望 大阪自治体問題研究所 理事長 中山徹 [2019.03.36] |
声明・提言・解説等 |
意見書「第5次エネルギー基本計画は、国民的な議論のもとに策定し、原発0とともに、脱炭素社会を実現する計画とすることを求めます」 [2018.1.17] |