誘い合って投票に行きましょう!
そして「大阪市廃止」反対の意思表示をしましょう
ー住民投票の告示にあたって、みなさんに訴えますー
2020年10月13日
一般社団法人大阪自治体問題研究所理事会
大阪市を廃止して四つの特別区に分割することへの賛否を問う住民投票(11月1日投票)が、昨日告示されました。
私たち大阪自治体問題研究所は、この「構想」が出された当初から「大阪市という政令市が持つ、住民のための強大な財政と権限を手放すものであること」、「『二重行政をなくす』というのは、住民サービス廃止・削減の口実であること」、「目的は、財政と権限を大阪府に集中し、IR・カジノの誘致やリニア新幹線の誘致など、湾岸部や大阪市中心部の大規模開発にあること」、したがって「住民にとっては負担ばかりが押し付けられるだけであること」などを訴え、その具体化に反対してきました。
今回改めて、住民投票にかけられる内容は、2015年に大阪市民が否決した内容と比較をしても、分割される特別区の数が5つから4つに変わっただけであり、その基本的な仕組みは全く変わっていません。それどころか、この「構想」の持つ重大な問題点が明らかになっています。
最大の根拠とされている「二重行政をなくす」という問題ではどうでしょうか。
「近くに府立病院がある」として、住吉市立病院が廃止されました。しかし、吉村大阪市長(当時)は、地域医療体制の弱体化への住民や医療関係者の願いの高まりを受け、同等の機能を持つ民間病院の誘致を決めたものの失敗し、代替えの医療施設の建設を進めるという迷走ぶりです。
「市立環境科学研究所と府立公衆衛生研究所の統合・民営化」は、今回のコロナ禍のような感染症対策や、食品の安全・安心にかかわる検査研究、水質や大気の汚染に関する検査などの能力を大きく低下させました。
障害児の教育・発達保障を担う市立特別支援学校の大阪府への移管は、「教育条件は後退させない」との府・市教育委員会の言明とは裏腹に、予算が大きく後退し、子どもたちの学びや育ちを支援する実習助手の大幅削減など教育条件の後退を招いています。
最も許せないのは、コロナ禍で住民のいのちや暮らし、営業が脅かされている今この時に、松井大阪市長は、二重行政を否定する立場から「バーチャル都構想」などと言って、コロナ禍対策を大阪府に任せきりにし、大阪市独自の対策を講じていないことです。
そして、吉村知事は、コロナ禍対策よりも住民投票の実施を優先するために、コロナウイルス感染症の状況を住民に知らせるとして自ら設定した「大阪モデル」を一方的に変更し、「赤信号」を発令しなくていいようにしてしまったことです。
大阪府・市の経済政策についても見直しが必要です。
「大阪市廃止」推進勢力の唯一の経済政策は、大阪市を廃止して大阪府に巨大な財政や権限を集中し、万博やIR・カジノに向けた大規模開発を進め、観光などのインバウンドを呼び込むことでした。しかし今年春以降のコロナ禍は、こうした「見込みや期待」を大きく変化させました。
大阪・関西万博の実施形態について、運営主体である「日本国際博覧会協会」は、世界中からインターネット経由で参加できる「バーチャル会場」をつくる検討を本格化させるとしています。
さらに国際カジノ資本がコロナ禍により世界的に大きな事業不振を抱え、大規模な開発投資が必要な「ランド型」から撤退し「バーチャルカジノ」へと舵を切っている状況などをふまえれば、大型開発やインバウンド依存の政策の抜本的見直しが必要となっています。
また、この間の議論の焦点ともなった、「特別区に移行した場合の財政シミュレーション」についても、「コロナ禍での経済状況を反映したものに再検討すべき」との極めて当然の指摘に対し、「大阪市廃止」推進勢力は、「減収は国が補てんしてくれる」「コロナの影響は一時的」などと、根拠も示さずに「再計算は必要なし」と言い切るなど、市民を欺くものと言わざるを得ません。
みなさん
改めて再度の住民投票は、130年余の歴史を持つ政令市・大阪市を廃止し、権限や財政力が劣る特別区に再編するという、後戻りできない重大な選択への賛否を大阪市民のみなさんに迫るものです。
しかし、大阪府・市は、コロナ禍の中でも「住民投票」の実施にこだわるあまり、市民の皆さんに十分な情報を提供していません。5年前の住民投票では、合計39回、約3万2千人参加の「住民説明会」を行いました。しかし今回はコロナ禍を口実に、参加可能な説明会はわずか8回、オンラインでの説明会を数回実施しただけです。
また、その内容についても、賛成意見ばかりを書き連ねた資料を紹介・説明する一方で、市民や自治体関係者、地方行財政の研究者から、自治体の権限の縮小や独自の財政力の低下、初期投資の増大など、デメリットの指摘がされているにも関わらず、その内容は紹介すらされていません。
このような状況は、今回の住民投票の根拠となる「大都市地域における特別区の設置に関する法律」第7条2項が、市長に義務付けている「協定書の内容についてわかりやすい説明」が行われているとは、とても言えない状況です。
みなさん
私たち大阪自治体問題研究所は、住民の暮らしをよくすること、そしてそれを支える地方自治の民主的な発展をめざすことを事業の目的としています。
こうした立場から、大阪府・市に対して、投票までの日数は多くはないものの、改めてメリット・デメリットの両面にわたって市民にていねいに説明と議論の機会を設けるよう求めます。
大阪市民の皆さんにお願いいたします。投票日は11月1日ですが、期日前投票が本日13日より始まります。コロナ禍であり、十分な備えをされたうえで、ぜひ誘い合って投票に行き、「大阪市の廃止に反対」の意思表示をしていただくようお願いいたします。
メリット・デメリットが十分伝わらず、賛成か反対か決めかねておられる方もおられると思います。
今回の住民投票にかけられた選択は、「2025年に大阪市を廃止し、4つの特別区に再編する」ことへの賛否です。従って、「賛成」は「大阪市を2025年に廃止する」という意思表示ですが、「反対」の意思表示は「大阪市をなくす」ことに「反対」の人だけではなく、「賛成だが今決められない」「もう少し考えたい」という意思表示でもあります。
従って、「わからない」「もう少し考えたい」から棄権をするのではなく、必ず投票所に行き、意思表示をしていただくことを重ねて呼びかけます。
以上