大阪市の権限と財政を大阪府に召し上げる
「広域一元化条例」制定の動きに反対する


2020年12月19日 大阪自治体問題研究所 理事会

松井大阪市長は、またもや「二重行政をなくす改革」として、2021年2月の大阪市議会に広域行政を府に一元化する条例案を提案するとしています。

大阪自治体問題研究所は、こうした動きに対して、先の住民投票の結果に背を向けるばかりか、当面する喫緊の課題であるコロナ禍から住民の生命と健康、営業を守るという自治体の役割を果たす上でも支障をきたすものとして、強く反対を表明します。

2020年11月1日に実施された住民投票では、大阪市廃止・特別区設置の「協定書」が否決されました。このことは、従来からの権能と財政を持つ大阪市を存続させることを、市民が選択したことにほかなりません。

この住民投票の結果に鑑みれば、大阪市は引き続き、大阪都市圏の母都市の役割を果たすとともに、大都市特有のニーズに応えた行政を進めていかなければなりません。

この大都市特有のニーズに応える行政機能は、一般市町村には備わっていないものです。具体的には、広域的な交通インフラ、港湾、都市計画、大規模公園、経済成長政策、高度医療、大学等があげられます。

こうした行政は、地方中核的機能を持つ大都市に必要不可欠な機能であり、それらを表面的な「二重行政」などの口実をつけて、大阪市から大阪府に財政を含めて丸投げしていいものではありません。

先の住民投票に諮られた「特別区設置協定書」では、大阪の成長・発展のために「司令塔を一本化する」として、大阪市を廃止した上、大阪市が持つ広域行政機能を大阪府へ移管し、そのための財源として年間2000億円もの税金が移譲されることになっていましたが、このことは、市民の意思として否決されたのです。

現時点で、松井大阪市長らが2月の議会に上程するとする「広域行政一元化条例」が、どのような内容を持ち、大阪市の広域行政機能のうちで、何を対象とするのかは不明です。

しかし、ひとたびこのような条例が可決され、それに基づいて大阪府が大阪市の権能や財政をも投入して、万博・カジノ・大型開発に邁進すれば、大阪市から大阪府に回される財金も膨れあがっていくことは必至です。このことは、広域行政と生活行政という二つの機能を果たすことが求められる大阪市にとって、市民の身近な暮らしを支えるための権限や財政を失っていくという甚大なリスクが危惧されます。

こうした意味で、広域行政の大阪府への「一元化」は、住民投票に諮られた「特別区設置協定書」と実質的に同等の重みを持つものです。

2月議会に上程するとする「広域行政の一元化を推し進める条例」は、住民投票で示された大阪市民の民意に反するとともに、大阪市が持つ大都市機能の破壊が危惧されます。加えて、この条例の成立を2月議会で政党間の「取引」と、数の力を頼りに強行することは、熟議を本旨とする民主主義に対する冒涜と言わなければなりません。

以上の理由から、大阪自治体問題研究所は「広域行政一元化条例」制定の動きに対して強く反対するものです。