〔声明〕
「大阪都」構想の代替策 - 府市一体化条例具体化による維新政治の暴走は許さない
2021年5月12日 大阪自治体問題研究所理事会
さる3月24日、大阪府議会において、「大阪府及び大阪市における一体的な行政運営の推進に関する条例」(いわゆる「府市一体化条例」)が、大阪維新の会・公明党の賛成で可決、26日には大阪市議会でもほぼ同趣旨の条例が可決され、4月1日をもって施行されました。
この条例は、昨年11月の「大阪市廃止・特別区設置」の是非を問う住民投票で、2度目の否決という市民の審判が下されたにもかかわらず、吉村府知事や松井大阪市長が「二重行政をなくすことは民意」などと強弁し、「都」構想の代替策として提案されたものです。
その意図は、条例でもって大阪市が持つ権限や財源を大阪府に召し上げるという、全国にも例を見ないものであり、地方分権改革の流れにも逆行するものです。
もっとも、実際に可決された条例を見ると、当初吉村府知事が言及した大阪都構想並みの「成長戦略・消防・水道などの約430事務、財源約2000億円を目指す」とした規模にはおよそ及ばず、移譲の対象は、当面の万博・カジノ・IRなどの開発計画を進めるために不可欠な「大阪の成長発展に関する基本方針の決定」に関わる4項目、および「広域的な観点からのまちづくり等に係る都市計画」のついての6つの事務としています。
吉村府知事や松井大阪市長は、大阪市会で公明党の賛同を得るために、当初の条例案に若干の修正を加えましたが、副首都推進本部会議の本部長は府知事、副本部長が大阪市長という地位の不均衡が固定されている点に変わりはありません。
両者の力関係次第では、この条例を手がかりに大阪市がまちづくりの実権を失い、費用負担だけ負わされる危険性は残されたままと言えます。加えてこの条例には将来的に幅広い権限について移譲することを示唆した規定も含んでいます。
この条例は、大阪市が自立性を失うに至る第一歩になるものと見ておくことが必要です。
吉村府知事や松井大阪市長は、条例施行後の4月8日に第1回の副首都推進本部会議を開催し、権限移譲の具体化を進めるための規約の骨子の議論を開始、4月27日の第2回副首都推進本部会議で規約案などを具体化、5月中旬以降に開催される府・市両議会で可決を狙っています。
さらに第1回会議の議題にもあげられていなかった、条例に基づく都市計画を担当する「大阪都市計画局」、万博の準備を進める「万博推進局」という2つの府市共同組織を、秋にも新設することを、知事・市長の突然の提案で決定しています。
この間の副首都推進本部会議で明らかになったことは「大阪の成長発展に関する基本方針」「都市計画に関する権限移譲」という2つの分野の執行権限を移譲するための規約と、その計画推進のための組織づくりの規約を議会で押し通そうとしていることです。
こうした事態は、コロナ禍での先行き不安や、建設費用の高騰を覆い隠し、大阪維新の会が「成長戦略」の要として推進してきたカジノ・IR誘致や当面する万博に向けた大型開発を、有無を言わせず強行する暴走と言わざるを得ません。
また、「都」構想がとん挫する下で、当面する総選挙に向けた大阪維新の会の看板政策を急きょ掲げなおすという「党利党略」そのものです。
私たちは、「大阪都構想」の代替物として出された「府市一体化条例」の具体化としての規約の議会への上程や採決に反対するものです。また、この「府市一体化条例」について、市民の審判に背き、地方分権の流れにも逆行するものとして、改めて廃止を求めます。